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2001/08/31 (Fri) バツゲェム2 後日談

 昨日の夢が気になった私は、以前一度だけ会ったことがある友達の友達に相談することにした。その子はまだ二十歳になったばかりだというのにやけに落ち着いていて、ファーストフード店で話していたのだが、ときどきキョロキョロと斜め上を見回してはキッと何かを睨みつけてボソボソと呟く、まあ一言で言えば霊感少女だった。
「…そう。でもその夢は見たことないな。だからわかんないけど、あ、バスとか電車とかってよく乗るんだっけ?」
「え?うん、バイトは電車で行ってるから。1時間くらいかな」
「そう。わかった。これからは、乗り物の中で寝ちゃダメだよ。車もそう。それだけ気をつけて」
「え?う、うん。ありがとう」
「あ、それからね。言いにくかったんだけど…この際だから言っとくね。君さ、昔、子供の頃、何かを隠したまま忘れちゃってるみたいなんだけど、わかる?」
「え?えーと…。イヤ全然わかんない」
「そっかー。それと、ちょっと耳かして?」
 困っている私に、その子はそっと耳打ちした。
「(君の後ろに長い髪の女の子がいるんだけど、わかんないならわかんないままの方がいいよ。下手に気付いちゃうと眠らされるかもしんないから。忘れ物を思い出すまでは気付かない振りを続けてる方がいいからね)」
私は全身に鳥肌が立っていくのを感じた。後ろに、いるって?
 私達はメールアドレスを交換して別れた(番号はもう知っていたから)。

 そんな話をきいてしまっては、落ち着いてシャンプーも出来やしない。とにかく。それから数日後の夜、私は夢を見た。あの川原の夢ではなくて、子供の頃の夢を。そして私は思い出した。子供の頃私が仲良く遊んでいたあの子は、そういえば…学校の友達でも、塾の友達でもない。そして、いつしか離ればなれになってしまったのではなく、ただ、私がその子を見えなくなってしまっていただけ。その子はずっと側にいたのに(迷惑極まりないけど)。私だけを友達と思ってくれて、私を頼って。そしてまた遊ぼうと。
 でも、それはもう10年も前の話。私はもう就職を控えた大学生で、あなたは10歳そこそこの子供。立場も考えも何もかも違うのよ(そう言えたら楽かもしれない)。
 ある日、なかなか寝付けずにしかたなく酒を飲んでいた私は、テレビもついてない暗い部屋で、ついに言ってしまった。
「私につきまとうのはやめて!私はあんたの友達でも何でもないんだからっ!」

 気付けば、私の目の前には満開のコスモスが。

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2001/08/30 (Thu) バツゲェム2

 また迷い込んでしまったようだ。今日の私はなぜか妙に冷静で、ここが広い川原であることに気付いた。側を流れる川は美しく、水は凍るように冷たくて、それでもなぜか魚が泳いでいるという不思議な川だった。
 今日はあの女の子はいないようだった。集った人たちは、今日は川原の石を積んでいた。こんな光景をどこかで見たような気がした。ひとつ積んでは…ふたつ積んでは…それは誰のため?恐らく、ここでは、全てが自分のためなのだった。
 気がつくと私も石をひとつ手にして順番に並んでいた。携帯を畳んだようなサイズの、ツルツルでなめらかな石だった。石を上手く積めた人は憑き物が落ちたような爽やかなイイ笑顔で川とは反対側に走っていった。
 …あと3人で私の番だ。石はもうギリギリまで積まれている。もし、石を積めずに、これを崩してしまったら…一体どうなってしまうんだろう。そう思うと滝のように汗が流れた。しかし鼓動は怖いくらい静かで。私の体が私のものじゃなくなってしまったかのようで。
 私の2人前の中年男性で、積み石は崩れてしまった。その人は大声で叫んで、川の方へ走っていった。ざぶざぶ。ざぶざぶ。川は意外と深いらしく、すぐにその人の頭も見えなくなった。私の前に並んでいた、いい人そうな老人が呟いた。
「助かった…」
 私は難なく石を積み、老人と一緒に川の向こうへ歩いた。しばらく進むと、花畑が広がっていて、その手前に長い髪の少女が立っていた。髪に隠れて目は見えなかったが、口はにっこり笑っているようだった。
「また来てね」
 その声を聞いて、私達は花畑の中へ進んだ。

 目が覚めると、まるで水をかぶったかのように汗をかいていて、手には一本のコスモスが握られていた。最近、あの夢を見ることが多い。以前より周期が早まっているようだった。もし石を崩してしまったら。そう思うとやたら喉が渇いた。心臓は激しく打っていた。

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2001/08/29 (Wed) 埼玉ラブストーリー(4)

 あの雨の日、少女が一人で立ち尽くしていた。少女は記憶喪失らしく、びしょ濡れの白いワンピースで、透き通るような肌で、信じられないような美しいブロンドで、立ち尽くしていた。
 どこの国の出身かは知らない(聞いても記憶喪失では答えられない)が、なぜか日本語が堪能だった。最初、僕は下心から彼女に声を掛けた。少女は仔犬のような目で僕をみつめ、しばらく話した後(何を話したか覚えてないけど)、僕の部屋へ行った。
 僕はしがない大学生で、いきなり部屋に女の子を連れ込んでしまって同棲を始めてしまって内心テンパっていた。僕が彼女を喜ばせようと思ったことは空回りだった。彼女は御飯をまったく食べなかった。それでも僕のいうことはハイハイとよくきき(というかほとんど言いなりみたいな感じで何でもきいてくれた)、僕らは動機こそ不純だったものの、気心の知れた、よいカップルになった。
 僕は彼女に“リリー”という名をつけてあげた。今にも折れそうな花のイメージ。不器用だった彼女も、次第に料理も上手くなり、掃除洗濯もしてくれた。でも、食事だけは採らなかった。

「どうして御飯を食べないんだよ?大丈夫なのか?」
「私は、大丈夫だから。あなたこそ、食べたいものはあるの?欲しいものはあるの?」
「僕は君を喜ばせたいんだ。君を大切にしたいんだ」
「私もあなたを喜ばせたい。何をすればいいの?」
 そして僕は気付いた。リリーは、何かズレている。人間としての感覚がどこかズレているのだ。相当不幸な家庭で育ったんだろうな…
 リリーが僕の部屋に来てから約一ヶ月、僕らは初めてセックスをした。そのときにはもう、僕はリリーのことをこの上なく好きになっていたから、大切にしたかったから、僕の気持ちなんてどうでもよくて、ただ喜ばせるためにしようとしたのに、しかし、彼女はメチャクチャ上手かった。僕はリリーに完全にハマってしまった。
 それから、僕も変わっていったのかもしれない。互いに思い合っていて、互いを喜ばせたくて、そのための手段がセックスなら、それはカップルとして正しいのかもしれない。
 ある夜、リリーは布団から抜け出していきなり服を着始めた。僕が何でだよ!と問い詰めると、小さく「思い出した」と言った。
「私はアンドロイドだから。だからあなたを喜ばせてあげたいけれど、私は、私自身を喜ばせてあげたい」
 意味不明なことを言って、リリーは部屋を出て行った。僕があわてて追いかけたときにはもうどこにも姿はなかった。

 あれから2ヶ月くらい経っただろうか。夏休み、僕は東京まで出てバイトをしていた。そんなある夜、僕は街角でリリーを見つけた。一人で歩いていた。しかし、僕といた頃のようにキョロキョロしながらではなく、しっかりと前を見ていて。その日、なぜか通りに人は少なくて、しかも細道に入っていくリリーを僕は、気付くと、追いかけていた。
「リリー!」
 呼び止められて、リリーは振り向いた。2ヶ月前と同じ感じだった。僕が近寄ろうとしたそのとき、リリーの頭が飛んだ。
 頭だけがコロコロと僕の方へ転がって、僕は口をあけたまま何も出来なかった。リリーの後ろには、このクソ暑いのに黒いスーツを着た男たちがいた。そして男たちをかきわけ、白衣の男が現れた。
「君がこの子を隠していたのか。見ての通り、この子は人間じゃない。アンドロイドだ。このことは誰にも言うな」
白衣の男は一万円札を数枚取り出して僕のポケットに入れ、リリーの体を変な箱に詰め始めた。
「リリーは…」
「ん?」
僕は混乱している自分に気付きながらも、リリーの頭を抱えて白衣の男に話しかけた。
「あ、頭は…僕に…く、くれません、か…」
「はっ。何を言っている。ダメだ。見てみろ。アンドロイドは頭だけでも数分は動く。もう記憶装置に繋がっていないから君を見てもわからないだろうがな」
僕は腕の中のリリーの目をみつめた。
「私は、あなたを、喜ばせたい。なにを、すれば、いいですか?」

 白衣の男はリリーの頭を僕の腕から奪い、黒服たちといっしょに行ってしまった。僕に残されたのは数本のブロンドの髪だけだった。

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2001/08/28 (Tue) 埼玉ラブストーリー(3)

 アンドロイドの一体が逃げ出してしまった。地上へのエレベータを、眠っている他のアンドロイドと一緒にパッケージ内で乗り過ごし、地上へ出た瞬間にトラックを奪ったという。どこでそんな知恵をつけたというのか。しかし車があるというのは大誤算だった。また会議でうるさいことを言われるのだろう。まあ、いいや。僕はまたこう言うだろう。
「だからこの計画は危険すぎたんですよっ!」
 それでも上司はそんなことは気にも留めず、またアンドロイドの量産を命令するに決まってる。噂ではチーフ以上の管理職はセクサロイドを配給されているらしい。羨ましいなんて話だ。この計画は人として間違ってる。人体実験や人間クローンと同じレベルの倫理が必要だと僕は思う。そうしたとき、金儲けのためにこんなことを続けては…
 どうせマスコミや政治家の上の方にはセクサロイドは既に配給されているんだろう。僕らのような下っ端が心配したところで無駄というものだ。高給を貰っている身分としては、僕も、あまり大きなことは言わないようにしよう。

 実を言うと、アンドロイドの耳についている制御器というのはドラえもんの耳と同じで、最悪の場合、外れたとしても制御が出来なくなる以外に障害はないのだ。つまり、人間として3ヶ月程度を生きることもできるのだ。食事は必要ないが。

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2001/08/27 (Mon) 埼玉ラブストーリー(1)

 ウーウーウー。サイレンが鳴る。
「アンドロイドが逃げました。地下7階研究員は速やかに処理を行ってください。繰り返します。地下7階研究員は…」
 地下研究所内に、また放送が響いた。より人間に近いアンドロイドの研究は、外見を完璧にしただけでは使えないらしく(それならマネキンでも動物でも同じだというリサーチ結果が出た)、ついに“マインドシステム”の完成により、ある程度の感情を持ったロボットを生み出すことに成功した。とはいえ、簡単な言語理解機能と会話中の表情変化システム程度だ。ハウスメイドロボットや老人ホームなどの話し相手ロボ程度ならそれでもいいらしいが、実際に必要とされているのは、仕事を完璧にこなすビジネスパートナーロボだった。確かに、アンドロイドは言われたことはほぼ完璧にこなす。多く人手が必要な仕事…工場内作業や農作業用にと開発が進められていた。
 しかし、つまるところ、人の目的は欲望へと辿り着く。
 この研究所の地下深くへいくほど、アンドロイドの人間的完成度は(見た目にも内面にも)精密度が増していく。ここ、地下10階以下ではマインドシステムを発展させた“アイデンティティシステム”の開発と組み込みにより、最早アンドロイドと人間を見分けるためには耳についた制御器の有無を確かめること以外にない。
 僕はつい先週、地下14階の研究員に配属された。研究所としては最下層で、そこでは完璧な外見を持ち、ほぼ完成されたアイデンティティシステムを搭載したアンドロイドの最終調整を行っていた。このフロアは地上への直通エレベータでしか行き来できない。他のフロアとも隔離され、一般研究員にはその存在さえ知らされてはいない(うわさで聞いていたが)トップシークレットフロアだった。
 僕はここで働くことに、良心が痛む。今僕の目の前でカプセルに入り眠らされている(出荷用未稼働の)アンドロイドたち…。彼ら、あるいは(というかほとんどが女性型だったが)彼女たちは目を覚ましてから、再び眠りにつくまでは…。そう考えると、僕はいたたまれない気持ちになる。
 人がロボットに求めるものは、つまるところ、このフロアへ辿り着く。このフロアを、僕ら研究員は、こう呼んでいた。通称“セクサロイドフロア”。

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2001/08/26 (Sun) 埼玉ラブストーリー(2)

 アンドロイドの一体が搬送中のミスにより目覚めてしまった。ロシア人少女タイプで知能はBクラス、身体能力はAクラスの、オークションでは1000万円近い値をはれる、総合Aクラスのアンドロイドだ。ちなみに、地下14階からの搬送は闇オークションへ直通で、金の余ったVIPども(主に変態)が集う場所へと続く。一般市場へ出すのはまだまだ(倫理的に)危険らしい。とにかく、一体のアンドロイドがこのフロアを彷徨っているのだ。
 作業用ロボットの知能がDクラスであることを考えても、いや実際にBクラスの知能ともなれば、人に言われたことは完璧にこなし、しかもある程度の未来予測からその時点の自身に最適な行動パターンを考え出すことから、目覚めたアンドロイドを放置するのはかなり危険だった。もしも他のアンドロイドたちを目覚めさせようものなら…(アンドロイドを眠らせるには耳の制御器を制御するか、特殊制御用オイルを飲ませるしかない(これは眠らせるのとは少し違うが)。自動充電装置により、少なくとも3ヶ月は稼動し続けるのだ。
 ここ、地下14階は地上へ直通だ。地上は森の中にある隔離された研究所とはいえ、偶然が重なればそのまま逃げおおせることも可能だろう。もしそうなった場合、森を抜けたり街を歩いたりしていく中でかなりの学習をすることになる。知能メモリのリミットを越えることはないとしても、相当したたかに生きていくことは可能だろう。あるいは、自分を人間と思い込み制御器を隠して社会に溶け込むかもしれない。
 何より、ここは埼玉県内だ。
 僕が恐れているのは、こんな少女タイプのアンドロイドが生き抜くことではない。完璧な動作と知能を持つ、人間が努力というレベルではおいつけない完璧な “新人類”のカリスマが現れることだ。もしアンドロイドで、人を扇動するカリスマが現れた場合、人はそのアンドロイドに従い、立場は逆転するだろう。上司は聞く耳を持たなかったが…、セクサロイドよりも求められる欲望が強い部分に、いや、あるいはすでに開発が始まっているとしたら…

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2001/08/14 (Tue) リーサルウェポンガール

「ライターを買ってくれませんか?」
 雪がちらほらと降ってきた冬の夕暮れ、少女はいつものようにレンガに囲まれた街角でライターを売っていました。しかし一向に売れる気配はありません。道行く人は美しく着飾り、幸せそうに笑いながら通り過ぎていきます。
「この街の人はなんてしみったれなの?1ドルのライターくらい買ってくれてもいいじゃないの。ブルジョワぶりやがって最低だわ!」
 やがて夜になり、人通りもなくなってしまいました。少女はフードに積もった雪を振り払い、かじかむ手でライターを1つ取り出しました。
「そういえば今夜は…」
 風が強くなってきたので、火はなかなか点きません。少女はいらいらしてライターのリミッターを外してしまいました。やっと火が点いたかと思うと、10センチ近い大きな炎になりました。
「ああ、暖かいわ…。この汚らしい街や通り過ぎる人の薄汚れた心よりよっぽど暖かいわ」
少女はわざとらしい嫌味を言いながら目を閉じ、焼きたてのパンや七面鳥の丸焼きやシャンパンやオレンジ色の部屋をイメージしました。
 ライターを手にニヤニヤしている少女のもとへ、街のシェリフがやってきました。
「ちょっと君、こんな時間にこんなところで何をしてるんだね?」
少女はハッとして目を開けました。シェリフはイヤな感じのデブで、ガムをクチャクチャしていました。しかもちょっと酔っていて、左手にはロシア人が持っていそうな小さな酒の瓶が握られていました。目つきが尋常ではありませんでした。
「どうしてこの街はこんなクズばかりなのかしら?もう沢山だわ!」
 少女は酒を奪い、おもむろに瓶でシェリフに殴りかかりました。瓶で頭を殴るとドラマのようにガシャーンと割れ、シェリフは酒まみれで目が点になりました。すかさずライターで火を点けました。マイガーとか言いながらのた打ち回る火達磨を見ていると、少女の中で何かが変わりました。
 そこへ、少女の友人が駆け寄ってきました。少女はうつろな瞳で友人を見ては、小さく呟きました。
「ごめんね、私、こんなんなっちゃった…」
 この街で、一番最後のラブストーリー。あれ?

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2001/08/10 (Fri) 夢オチ

 風邪を引いたと言ってはズル休みをしたがる小学生のように、怪我をしたと言っては血や包帯を見せたがる中学生のように、夢に生きると言っては受験から逃げたがる高校生のように、無意味なペナルティを課しては酒を飲ませたがる大学生のように、それはそこにいつの日もあるのだった。
 夢を見た。子供達はタンクトップというかランニングで駆け回り、さらさらと流れる川と、やけに落ち着く寺があって、見渡す限り自然しかなくて、大人たち(というか老人しかいないけれど)は皆笑顔で。そんな絵に描いたような、行ったこともない田舎の夢。夏の田舎…。日本人の心の風景か。
 僕はそんな村のことなんて知らないのに、知らない子供と一緒に無邪気に遊んでいた。夢の中で僕は子供で、塾をサボる口実を考えながら飽きない風景の中を走り回っていた。かくれんぼのとき、僕は寺にあった大きな壺の中に入った。
 真っ暗で怖くなった僕は友達の名前を呼ぼうとしたけど、さっきまで一緒に遊んでいた子供達の名前なんか知らなかった。そういえば、顔も思い浮かばない。不意に全身から汗が噴き出すような感覚に襲われ、僕は異常に寒くなった。
 どうせ夢だろ、これも。そう思うようにしてケイタイを取り出す。ちゃんと電波は通っていて、僕はすかさず彼女に電話を掛けた。彼女は僕をさんざん罵倒して、狂ったように笑い出した。怖くなってケイタイを思い切り投げる。暗闇の中、どこか遠くでカシャンと音がした。その中でもまだ笑い声は小さく聞こえていた。
 僕は自分の行いを振り返った。平凡に生きていたはずの僕は、そういえばいつの日も決断を自分で下さなかったことを思い出した。そんなこと、今さら何になるというのだろう。なんだ?謝れば済むのか?ごめんなさい、って過去にあやまれば、悔やめば、僕は救われるのか?
 ああ?くだらねえ。いつもそうだ。こんな物語はいつも主人公の改心で結末を迎える。ていうか誰だ?誰が僕を判断しやがる?
 僕は逆ギレした。それから先は記憶がない。次に気が付くと、そこは部屋の近くの公園だった。夕暮れの公園、だけど何の愛着もない場所。ランニングの子供が駆けて行ったけど、僕はそんなガキのことなんて気にも留めずにコンビニで酒を買って帰った。

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2001/08/08 (Wed) バツゲェム

 そこは、だだっ広い砂浜のようでもあり、公園のようでもあり、グラウンドや、あるいは芝生のようでもある不思議な場所で、私はときどき、そこに迷い込んでしまう。
 そこには大人も子供も男の人も女の人も年をとった人も体の不自由そうな人も、色んな人が笑顔で話している。以前来たときはキャッチボールのようなことをしていたと思う。
 今日は、皆で積み木をしているようだ。いつのまにか私の手に片手に収まる程度の積み木がひとつ。大きいものから小さいものまで、人それぞれに様々な積み木を持っていて、順番に積んでいく。何かのカタチを作るのではなく、ただ上へ上へと、バランスを取りながら積んでいく。
 そのうち、私は何かを思い出しそうになる。頭痛に耐えられなくなって膝をついていると、黒い服の女の子が私のもとへ近寄ってきた。
「あら、あなたは半分目が覚めてるみたいね」
見た目以上にしっかりと話す子だった。もしかすると大人だったかもしれない。
「目が、覚めてる?」
「そうよ。あなた、そういえば前もここに来たのに参加しなかったのよね」
 女の子にそう言われ、私は思い出した。目の前の彼らがしている遊びは、ただの遊戯ではなくて。
「バツゲェム…」
私がそう呟くと女の子はにっこり笑って歩いていってしまった。
 そう。私は思い出した。彼らはバツゲェムをしているのだ。彼らが、そして私が持っているのは積み木でははく、“罪”。自らの罪悪で出来た“罪木”…ツミキ。そして彼らのしていることは、罪を積んでいくゲーム。以前のキャッチボールでもそうだった。全員の罪を1人になすりつけるための“罰ゲーム”。
 罪と罰。以前、あの女の子は私に言った。“つみほろぼし”には2通りがある、と。1つは、大人しく罰を受けること。それが出来ない人はこうして誰かに罪をなすりつけては逃げていく。もう1つは、自ら受け入れた罪を償うこと。どちらも同じようだが、“罪の意識”が全然違う。
 ああ、もうすぐ目が覚める。私は握り締めた罪をしっかりと認識して、この場所を去ろう。

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2001/08/03 (Fri) テキストナイト

 毎月10日(*当初は月の真ん中ということで15日を予定しましたが一身上の都合により15日は駄目なようで変更しました)は、テキストナイト。その日だけ、全てのサイトは争いや馴れ合いや煽りから解放され、同じ志のもとに時間を共有する。そこにあるのはただの共通意識。大手も弱小もなく、フォントもスタイルも日記もニュースもアイドルも、全てが同じベクトルを抱く。
 毎月違ったテーマが与えられ、TSOはそれぞれにそのテーマに沿った内容のテキストを自サイトにアップする。そこには批評さえなく、アップするかしないかすら問題ではない。全てが自由。他のサイトのことなど気にする必要もなく、集団でありながら個でもある、特別な夜。
 テーマのあるテキストを書いて点数をつけてランクする、そんな時代は終わりゆく。ランクしたい奴はすればいいし、したくない奴はしなければいい。ただテキストサイトであるという事実が存在するだけ。そんな、脆く儚い夢物語。いつか成功したら、面白いかもね。

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2001/08/02 (Thu) 幸福屋

 駅の裏の人目につかないところに、新しく小さなお店が出来ていた。こちら側はラブホテルが乱立し、近くの公園には常に不良がたむろしているという危険地帯だったので、一般人は近寄らなかった。そのお店は占い館みたいに暗くて、看板も紺色に黒の字で何が書いてあるかは近寄らないと見えなくて、酔っぱらった僕が終電を逃してフラフラしていたときに、たまたま気付いたのだった。
 その看板にはこう書かれていた。「幸福屋」。
 深夜だというのに営業しているらしく、その暗い店内に入ってみる。客は一人もいなくて、店には何も置いてなかった。ただカウンターがあり、占いババみたいなローブを着た人が(水晶はなかったみたいだけど)座っていただけだった。
「いらっしゃい…」
声は意外にも若い女性のようだった。
「あの、このお店は何を売ってるんですか?」
女性は間髪入れず答えた。「幸福です」
「幸福?」
 いぶかしがる僕に、女性は(フードのせいで顔は見えなかったけど)聞くより試した方がいいと言い、僕に500円を払わせた。その程度なら、ということで僕は500円玉をカウンターに置く。
「今から24時間以内に、あなたに500円分の幸福が訪れます…」
 よくわからないままに店を出た僕は、とりあえず駅の表側(メイン通り)に出て、これからどうしようかと考えた。まあ、終電を逃した僕はいつも漫画喫茶で時間を潰すのだけれど。
 そして僕は漫画喫茶で熟睡して、会社に遅刻してしまった。しかし何故か上司も遅刻しているということで、お咎めはなかった。しかもタイムカード機が壊れていて、出社時間が記録できなかった。
 後で考えると、それが500円分の幸福だったのだろうか。それから数日、同僚と昼食(牛丼)を食べていると、同僚が言った。
「あのさあ、幸福屋って知ってるか?あの駅の裏にある変な店さぁ、金出した分だけ幸せになれるって意外と評判なんだぜ」
「へえー」
「そういう俺も、最初は怪しんでたんだけどよ、この前なんて1万払っちゃってさ。何が起こったと思う?」
「んー。宝くじにでも当たったか?」
「ちげえよ。ま、宝くじも買ったけど。そんときは3000円分の幸せだったんだけど、当たったのは1200円だった。俺にとって3000円の価値の幸せは1200円分しかねえんだ。けど、1万払ったら、この前電車の中で女子高生に手紙渡されてさ。メアドと番号書いてあんの」
「まじで!?」
「すげーよ。あの店は。お前も1回行ってみ」
 店の女性は言った。お金の価値と幸せの値段はイコールではないと。僕は思い切って3万円を支払った。
 次の日の夕方、警察から電話があった。盗難にあっていた僕の原付が見つかったと。取りに行くと、何故か新品同様にピカピカになっていた。
 金さえ払えば幸せが途切れることはない。給料日ごとに店に通い、だんだんと僕の求める幸せは高価になっていく。そして僕はサラ金に手を出し、50万を手に店へ行った。
「これで幸せを売ってください!」
女性は初めてフードを取った。めちゃめちゃ美人だった。そして、美人は小さく言った。
「本当の幸福はプライスレス。それはあなたも知っているはずです…」
「しかし!形ある幸せはこうしてあなたから買うことが出来る!さあ、僕は客ですよ!売って下さい!僕に幸せを!」
「価値観は人それぞれです。1万円で女性を抱ける人もいれば、ビルの谷間から夜空を見上げるだけの人もいる。テストに受かったり、懸賞に当たったり、その全てが本来はプライスレスなはずです。それが…」
「違う!僕がほしいのはっ」
「あなたが本当に欲しいものとは、何ですか?」
 その言葉に僕は息を呑んだ。そうだ。僕は何のために幸せを手にしたいと考えるんだろう。もしかして、それって必要なくないか?いや、それ以前に、僕は…。
 僕は既に幸せを持ってるんじゃないのか?
 美人は再びフードを被っていた。僕はペコリと頭を下げ、店を出ようとした。
「ありがとうございました。幸せについて、少し分かった気がします!」
「あの、ちょっと」
「はい?」
「今のあなたの心。澄んでいますね?」
「はい!ありがとうございました」
「幸せについて、他人に影響されずに考えることが出来ますね?」
「はい!あなたのお陰です」
 そして美人は言い放った。
「それがあなたの50万円分の幸せです」

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2001/08/01 (Wed) 酔っ払いが悪いなんて誰が決める?

 テキストサイトはー、なんて話をしたいわけじゃないんだ。どうせお前ら、アレだろ?(上着のポケットから酒の入った瓶を取り出して一口)ほら、中学生が威張ってるような、そんな感じだろう?あ、違うか?(瓶を回すように振りながら)ほれ、中学生っつったらよ、洋楽を聴いてる奴がスカしてるような気がしたろ?お前らが洋楽を聴いてたとしても、そんなことぁ俺には何も関係ないからな(また一口)。そうじゃなくても、ほら、なんつったっけ、最近売れてるインディーズバンド?ナンタラって奴だよ。あれもよ、日本人のくせに…いや、『~のくせに』ってのは良くない言い方だな。すまねえ。ただ、アレよ。英語で詞を書いてるじゃねえか?それって一見カッコいいように見えるがな、あの詞はほとんど意味なんてねえのよ。ただ英語ってことがカッコいいと思ってるんだろうな。簡単な英語よ。ほんとにな(ゴクゴクと勢いよく酒を飲み、プハー)、SVOだけの英語よ。いや、SVCだっけか。まあいい。『私は、ナントカを、好きです』みたいなよ、なんだそれ?そんなので英語知ってるつもりか?お前らそれで一体いくら稼いでるんだ?って話になるだろ。そうだろ(瓶の中身を飲み干す)、あ、話がそれたな。テキストサイトについて、だっけか。ガハハハハ(酒を飲もうとするが中身がカラである事に気付き眉間に皺を寄せる)、あ、なんじゃコリャあ!(いきなり不機嫌になり怒りだす)ふざけんな!(瓶を壁に投げつけるが、瓶は割れずにゴトッという鈍い音を立てて床に落ちる)ああ、てめえら!てめえらはそんなに人からの評価が気になるのかっつってんだろーが!トンソクどもめ!モルヒネ漬けのてめえらは!寝たきりで痛みを感じないはずのてめらは!それでも新しい痛みを求めて自らを切り裂き死んでいった『ジャンキー』のように!人からの指図を何より嫌うはずのてめえらが!その実、人に道を指されないと方向を決められないなんてな!傑作だ!喜劇だよッ!笑えるッ!ああ、酒!酒持ってこんかい!
 …お客様、これ以上は他のお客様の迷惑になりますので…
 ああ!?てめえ、てめえもアレか!馴れ合い主義か!そうやって崇高で気高く誇り高い『三高』の魂を持ったこの俺をッ!(足元がふらつく)てめえらみたいな似非TSOが非難するっつーのか!ああ!さ…(何か言おうとしたらしいが店員に後頭部を殴られて気を失う)
 …またか…
 …ああ、最近、多いんだ。このテの野次が…
 …夏だしな…仕方ないさ…

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