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2001/12/29 (Sat) LOVEはじめました

 不思議通りにあるショットバーには不思議なメニューが揃っています。カクテルの名称はその店オリジナルのものが多いとはいえ、この店は特別なようです。名称だけでなく、ウォッカやテキーラ、リキュールなどといったベースとなる酒がそもそも存在せず、ベースは全てこの店オリジナルの「LOVE」で統一されています。「LOVE」にはアルコールは含まれていませんが、自分に合った「LOVE」を飲めばそこらのアルコールよりももっとスマートに酔うことができます。
 「LOVE」には大きく分けて4種類あります。飲むと胸の辺りが暖かくなって優しく穏やかな気持ちになれる“ホット系”、飲むほどに冷静になって視野が広がっていくのを感じる“クール系”、生きる活力が沸く“ライト系”、死にたくなるような自己嫌悪に襲われる“ダーク系”です。ダーク系を頼むには身分証が必要です。
 心まで凍りそうなほどに冷えた青いカクテル、「in1945」、同じように氷点ギリギリまで冷えた赤いカクテル「since1970」、逆に一口で暖かくなれる「sweet heart」、指輪やネックレスを溶かしてしまう「broken heart」、飲むと涙が止まらなくなる「seventeen」など、100種以上の「LOVEカクテル」が揃っています。
 そして毎年12月になると発表されるその年オリジナルのカクテルが、この店のスタンダードかつ一番の人気です。その年の名を持つ一杯は、飲む人によってその味は違うといいます。飲む人はその一杯で一年を思い出しては、笑い、泣き、ときに怒り、あるいは涙し、そしてまた来年を強く生きていこうと思えるのです。
 つい先日、「in2002」が、発表されました。あなたにとってこの一杯は、どんな味を持っているのでしょう。僕にとっては去年より美味しく感じられました。これはホット系なので、誰でも安心して飲めますよ。

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2001/12/26 (Wed) きっとキミは来ない

 僕は5年前からこの特殊秘密工作機関で働いている。まだまだわからないことばかりで、いつも先輩たちにどやされているが…、やっと今年は大仕事が回ってきた。出世するチャンスだ。
 僕の仕事はサンタクロース。
 サンタといえば、この国では単なるいいおじさん、程度にしか認識されてないだろう。赤い服に白いひげ、そしてちょっと太った、トナカイに乗ったプレゼントをくれるおじさん。まあ、外見的特長はそれで正しい。ただし、ひとつだけわかってないことがある。というかそれが一番重要なのだけど。それはつまり、こういうことだ。

『全人類を幸福に導くために12/24の夜から12/25にかけてプレゼントを与えてまわる幸福の使者・世界を又にかける非営利組織その構成員を通称・サンタクロースと呼ぶ』

 この意味がわかるだろうか?つまりは、怪盗の逆なのだ。予告状こそないが、どんな家にだって侵入してプレゼントを枕元に置いて立ち去るというのが仕事だ。この意味が、わかるだろうか?一般住宅でさえ最近はセキュリティが厳しくて仕事がしにくくなってるのに。

 昨日、僕に小包が届いた。ターゲット宛てのプレゼントが入った袋と、一本のビデオだ。ビデオを入れるとボスが映った。
『首相にプレゼントを贈れ。なお、このビデオは自動的に消滅する』
そしてビデオは終わった。巻き戻して見てみると山下達郎の「クリスマス・イブ」のPVが入っていた。
 …えっと、首相?っていうと、何?ホワイトハウス?違う。首相官邸?馬鹿な!どれだけ厳しいセキュリティが張ってあると思ってんだ…?確かにこっちはステルス装備で赤外線センサーとか携帯笑気とか睡眠薬とか(!)格闘術とか色々持ってはいるが。ちょっとしたミスが命取りだ。

 まあいい。じゃあそろそろ行ってくるよ。27日に作業報告と一緒に君へのメッセージを書くから、それがなかったときは任務失敗と思ってくれ。最後に。もう一度君に会いたかったよ。どうか僕の無事を祈っててください。いつか君にプレゼントを届けるよ。

    1999 12/24 Charlie “santa x' lawses” Katou




















 今年もまた、彼からの手紙を、開いてしまった。

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2001/12/24 (Mon) サンタさんはいるんだよって信じる子供たちの歌

 ベッドの端に靴下を引っ掛けて、少年は眠っています。ゲーム機が欲しいと読みにくい字で書かれたメモと共に、新しい靴下は、頼りなくぶら下がっています。深夜、少年の部屋に父親が入ってきました。そっと、そっと。そしてゲーム機とクリスマスカードを枕元に残し、父親は去っていきます。
 あの少年にとってのサンタは、父親です。
 
 少女には特に欲しい物はありませんでした。ただ、恋人と幸せにそして穏やかに過ごせる時間を望んでいました。その夜、少女は恋人と手を繋いで歩き、夜景を見て、食事をし、部屋で手作りのケーキを食べ、美味しいと言ってもらい、テレビを見て、そして眠りにつきました。恋人は小さなプレゼントを渡しました。二人は互いに与え合いながら、今日もいつもと同じように眠ります。
 あの少女にとってのサンタは、恋人です。
 同時にその恋人にとってのサンタは、少女です。

 教会には孤児院の子供たちが歌を聞きに来ていました。それぞれがささやかな願い事を胸に、しかしそれを口には出さぬまま、今日もいつもと同じように、そして明日もそのまた明日も同じように過ぎていくことを望みながら、穏やかな光と幸せそうな人々を見ては微笑みます。中には泣き出す子もいました。彼らは互いにかばいながら、笑わせあいながら、また孤児院に帰っていきます。
 街中でゴミ箱を漁ったり粗大ゴミ置き場へ行ったりしてその日を生きれるための物を探す中年がいました。中年はテレビやビデオ、コンポといった電化製品から弁当の食べ残しや真新しい雑誌など、色々な物を集めます。食べ物は自分で食べ、汚れているだけの電化製品や雑誌なら綺麗にしてフリーマーケットに持って行くこともあります。日払いの安いバイトをこなしたり、その日寝るための場所を探したりしながら、夜を過ごします。
 駅前で弾き語りをする青年は、今夜もいつもと同じように、かじかむ手でギターを弾きながら力強い歌を歌い続けます。聞く人がいようといまいと、人通りがあろうとなかろうと、十数年前に流行ったような力強い歌や、自分で作った自分のための歌を、今夜も歌い続けます。

 青年の歌が中年に明日を生きる力を与え、中年が磨いたゴミやなけなしのお金で買ったお菓子が孤児院の子供たちに笑顔を与え、子供たちの笑顔が通りすがりの少女の心に大きな優しさを与え、少女の優しさが恋人に変わらぬ大切な想いを与え、恋人たちの幸せそうな姿が家族の暖かい夜を迎える喜びを与え、そんな喜びや幸せで彩られた街が青年に新しく力強い歌を作りそして歌う気持ちを与えます。
 それぞれがプレゼント交換をし合い、この街は今日も眠りにつきます。

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2001/12/20 (Thu) FLY AWAY(5)

 彼女は、僕の月命日になるたびに、あの交差点に花を持ってきてくれる。僕はそのたびに、また彼女のことを愛しく思って、上へ行くのをためらってしまう。ずっと一緒に、いたかった。

 彼女は気付いていないだろうけど、僕は彼女を守っている。僕のことを思ってくれることが、僕の力になるんだ。魂はその辺が便利だ。思いや願いがそのまま力になる。だからその力を使って、彼女がチンピラに絡まれたり上司に怒られたりするたびに、僕は彼らを少しだけ不幸にしてやるんだ。

 だけど僕が死んでから、もうすぐ3年になる。当時、僕らは学生だった。でも彼女は年を重ねて、OLになって、仕事をしてる。僕はずっとTシャツ、ジーパンのままで彼女の周りをふわふわしてるだけだ。もっと何か、彼女のためにしてあげたいのに。お前は間違っていると、あの優しい光に言われた。現世に関わることは意味がない、と。

 彼女に、新しい彼氏が出来た。僕が死んでからずっと一人だったのに。実はその男のこともチェック済みだ。彼女に群がるハエかと思ってたけど、どうやらそうじゃないらしい。あいつの生活をのぞき見ていると、あいつが誠実でイイ奴だってことがわかった。
 でも、嫉妬してしまうんだ。だって、僕はまだ彼女が好きなんだ。

 そして僕の3回目の命日。彼女は僕の墓参りに来てくれた。あの彼氏も、一緒に。
「私、やっとあなたのこと忘れられそう。ごめんなさい。でも、ありがとう…。私、幸せになりますから」
 礼服の彼女は妙に大人っぽくて。この3年、ずっと一緒にいたつもりだったけど、やっぱり…もう、違うのかな。僕らはもう終わってて、それぞれに先に進むしかないのかな。彼女が望む道を止める権利は、僕にはない。ないんだ。
「僕は、真剣にこの人のことが好きです。絶対にこの人を泣かせたりはしませんから」
なぜか彼氏まで僕の墓の前で手を合わせてくれている。やっぱこの人、いい人かも。

 僕はそれから、彼女のことを執拗に追ったりはしなくなった。だけどもうちょっとだけ、現世に残っていようと思う。あの二人の幸せを願うから。

 守護霊だって、楽じゃない。

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2001/12/16 (Sun) FLY AWAY(4)

 魂には、差別はない。
 どこで生まれていても、どんな瞳の色でも、どんな肌の色でも、どんな言葉を話しても、何を信じていても、金を持っていなくても、誰も差別はしない。
 現世で、俺は、こんな世界が来ることを望んだ。魂で会話するから、言葉の壁はない。何を信じればいいのかがわかっているから、宗教の壁もない。肌の色が白かろうが黒かろうが黄色だろうが赤だろうが、そんなことは個性でしかない。人は、死んではじめて自分になれる。
 俺は、あの優しい光に言われた。お前の魂は澄んでいる…天国へ行くがいい、と。
 実際、今の俺にはふわふわと軽い感覚がある。このまま、この感覚に身を任せて上へ行けば天国へ行けるんだろう。
 しかし、しかし。

 俺は俺を殺した奴らを許さない。

 俺は現世へ戻り、俺を殺しやがったクソなチンピラどもを見つけ出した。そして夜ごと奴らの夢に出ては、奴らに恐怖を与える。物を動かしたり出来るほど長く霊をやってないから、俺が出来ることは夢でビビらすことだけだ。
 そんなことをする度に、俺は体が重くなっていくのを感じる。

 しかし、こんなイタズラでは俺の気が、晴れない。晴れようもない。どうしてお前らは、人を殺しているのに、少年であるというだけで、再びこの現世に放たれようとしているんだ!罪を償おうともせずに!いや、むしろ繰り返しながら、のうのうと生きてやがるんだ!生を謳歌し、弱者を笑いながら!どうしてお前らは裁かれない!
 …そして俺は決意した。憎悪に身を任せ、落ちていく感覚でもって…

現世の人間を呪い殺す。

お前も死ぬんだ。俺は地獄へ落ちるが、そんなことは構わない。もう、俺の魂は、人の形をしてはいないんだから。

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2001/12/13 (Thu) FLY AWAY(3)

 気付けば、俺はガラクタの中に立ち尽くしていた。
 なんだか体が軽い。ふわふわ、ふわふわ。どこまでも空へ上っていけそうだ。
 ところで俺は、何だ?どうしてここにいるんだ?

 雨の日も、風の日も、晴れた日も。春も夏も秋も冬も。朝も昼も夜も、俺はそこに立ち尽くしていた。そこへ運び込まれる、沢山のガラクタを眺めながら。
 どれくらいの時が経ったかはわからない。しかしそんなことは関係なかった。気がつくと、俺と同じようにふわふわしながら立ち尽くしているガラクタたちが、そこにいた。
「よう。おまえら、おまえらは一体、ナンなんだよ」
ガラクタは何も答えずにふわふわしていた。

 また時が経った。俺達はいつしか仲良くなって、毎夜くだらない話をしていた。俺達に残るわずかな記憶を語り合いながら、運ばれてくる次の仲間達を待った。
 車。冷蔵庫。テレビ。ラジオ。たんす。鏡。ハサミや鉛筆や、空き缶や、その他もろもろの、使われなくなったガラクタたち。皆、自慢できるものなど何もなかった。存在していたときは、何も思わなかった。

「なあ、そろそろ上へ行かねぇか?」
「まだ早いだろ。いつでも行けるんだ。もうちょっと後にしょうぜ」
「そうよう。時間はたっぷりあるんだから。それに、新しい仲間の姿を見るのって楽しくない?」
「人間の文明が変わってく様を、こうして間近に見てるんだもんな」
「なぁ、アレ見ろよ。あれってさ、電話なんだってよ。あの小っちゃいの」
「ええ!?俺と同じ、電話なのかよ!あのチビ!」
「アハハハハ…」

 ここには病気も学校も試験も何もない。ただ、仲間と語り合う、無限のような時間があるだけだ。上へ行くのもいいが、ここにいるのも、悪くない。

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2001/12/11 (Tue) FLY AWAY(2)

 天寿をまっとうした私は、光の国で、一つの穏やかな光に会いました。光は自分を神の使いだと仰いました。仏教を信ずる私でしたが、とりあえず、話を聞くことにしました。
 この光の国のこと、これより先にある天国のこと、そして地獄のことを聞きました。ひとしきり話が終わったところで、天国へ行こうとしている私を止め、光は言いました。
「お前を待っている人がいる。今一度、現世を見てくるのだ」

 若者の街、渋谷。その駅前にあるハチ公像の前では、沢山の人たちが待ち合わせをしています。それと同じように、霊となった人たちも、ハチ公前でずっとずっと待ちぼうけしているのでした。行き場をなくした霊たちが集う、待ち合わせの場所…。私は街のことは知りませんが、生きている人よりもずっと多い霊を目の当たりにして、驚愕してしまいました。
 しかし、彼らは悪さをするでもなく、ただ、約束を果たさんがため、今一度誰かに会いたいがために、ずっとずっとここにいるのでした。

 私を待っていたのは、若い娘さんでした。齢七十六の私は、一見しては誰だか解りませんでした。しかし、娘さんは私を見つけると、ふわふわと近づいてくるのです。
「やっと、会えましたね…」
 その言葉で私も理解しました。彼女は私が五十年以上も前に言った言葉を、ずっと守り通していたのでした。私はすっかり忘れていました。

きっと迎えに来ます。それまで、お元気で。

 気付くと私も彼女と同じように若い頃の体になっていました。魂の状態ですから、見た目は自在に変えられるのだそうです。しかし、現世には私の家族や、孫たちもいます。彼女には申し訳ありませんが、彼女を選ぶわけにはいかないのです。
 彼女は私の手をとって、微笑みました。
「一緒に行きましょう。そして、今度、また、私に会いにきてくださいね」

 私は彼女と一緒に、空へ上りました。次の命を願いながら。

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2001/12/10 (Mon) FLY AWAY(1)

 僕はもともと人間に飼われていた犬で。当時は御飯ももらえたし、散歩にも連れて行ってもらえた。でも、ご主人様が、ペットを飼えないマンションに引っ越すことになって、僕は、保健所へ連れて行かれたんだ。でも、恨んではいないよ。光の国で、僕は“あの優しい光”にお願いをしたんだ。天国へ行くのはもうちょっと待って貰えませんか、ご主人様のことをちょっと見守りたいんです。お世話になった礼を、少しだけでも、したいんです。そう、お願いをしたんだ。
 優しい光は言った。戻らない方がいいと。小屋の中から見ていた世界と、空の上から見る世界は、まるで別物だと。戻れば後悔すると。

 3ヶ月ぶりにご主人様の元へ帰ってきた僕が見たのは、僕よりもっと小さな犬だった。部屋の中で、ご主人様の隣で丸くなって寝ていた、子犬だった。子犬は僕に気付き、無邪気に尻尾を振った。

 …僕のご主人様を、取るな…僕を飼えないって言ってたのは、嘘だったの…僕よりこんな小さくて弱そうな奴の方がいいの…僕はあんなに苦しい思いをしたのに…ご主人様にもその苦しみを…このチビにも…

 魂のままでいると、思ったことが全て伝わってしまう。子犬は僕に怯え、寝ているご主人様の後ろへ隠れてしまった。僕は、自分の体がどんどん重くなっていくのを感じた。ふわふわ浮いているのに、地面へ、それよりもっと下の方へ落ちていく感じ。僕はそこで、やっとあの優しい光の言葉を理解した。これが、後悔なんだ。嫉妬なんだ。現世で醜い心を持ったら、落ちていってしまうんだ。光はこうも言ってた。
 …現世に関わるのはやめなさい。これからはお前の新しいライフを送ればいい…

 僕は子犬にそっと近づく。そして、呟く。
「もう僕はご主人様を守ってあげられないから、君に、お願いするよ」
子犬は解ったのか解らないのか、尻尾を下げたまま頷いた。

 僕はご主人様の顔を一回だけ舐めてから、空へ向かった。

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2001/12/01 (Sat) キングオブサバンナ

 サバンナで、子猫がないていました。そこにハイエナたちが通りがかりました。群れの中のたくましいハイエナはこう言いました。
「丁度いい。あれを食べて軽く腹を満たそうか」
メスのハイエナはこう言いました。
「可哀想よ。でも私たちの子供じゃない。このまま放っておきましょう」
若いハイエナはこう言いました。
「いや。可愛いじゃないか。連れて行こうよ」
たくましいハイエナはこう言いました。
「あんな子猫、成長しても俺のように強くはなれない。ならば俺の血肉とした方がいいだろう。何だ。俺の意見に不満なのか?」
 今まで、ハイエナたちは言い争いになったことはありませんでした。しかし、今回はなぜかリーダー格のたくましいハイエナの意見に賛成する者はいません。メスのハイエナはたくましいハイエナを睨み付けました。
「しかたない。だが、俺はそいつを守ってやらんぞ。メシの食い方一つも教えてはやらん」
 そうして、ハイエナの群れに、一匹の子猫が加わりました。

 いつものように群れで行動し、たくましいハイエナの指示で獲物を狙い、糧とします。子猫はその姿を見ながらも、肉をわけてもらうことはありませんでした。メスのハイエナや若いハイエナは肉を小さく切って与えましたが、食べようとしません。子猫は自分の顎で、骨に残った小さな肉の切れ端をちぎって食べました。たくましいハイエナはその姿を見ても何も言いませんでした。

 それから少し、時が経ちました。子猫も成長し、若いハイエナと同じくらいの体つきになりました。たくましかったハイエナは若いハイエナにリーダーの椅子を譲り、獲物を自分でとりに行くことも少なくなりました。群れの中の一匹として、その日とれた獲物を皆と同じように食べます。
 そんなある日、ライオンが群れを襲いました。せっかく獲った獲物を横取りに来たのです。若いハイエナたちは逃げ出しました。メスのハイエナは傷を負いました。ライオンは獲物を食うだけでは飽き足らず、たくましかったハイエナを狙いました。本来は無駄な殺し合いなどしないはずのライオンがこのときは、たくましかったハイエナに牙をむいて襲い掛かりました。
 そこへ、たくましく成長した猫がやってきました。たくましかったハイエナは、逃げることも出来ないほど消耗しています。たくましい猫はライオンと激しく格闘し、なんとか追い払うことができました。
 たくましかったハイエナは、もう動けません。群れの皆に囲まれ、静かに目を閉じていきました。そして最後に一言だけ、つぶやきました。
「強くなったな。もう、安心だ」
 そしてそのまま、目を開けることはありませんでした。

 たくましい猫は雄たけびを上げました。何度も何度も、声が枯れるまで、雄たけびをあげました。次第にサバンナの動物たちが集まってきました。ハイエナの群れを囲むように、沢山の動物がやってきます。
 たくましい猫は自分のたてがみを少しだけ千切り、たくましかったハイエナの横にそっと置きました。そして最後に一度だけ大きく雄たけびを上げると、何も言わず振り返らずに歩き始めました。ハイエナたちは無言でうなずき、彼についていきました。
 サバンナの沢山の動物たちもまた無言でうなずき、顔を見合わせ、そして彼の後に続きました。ハイエナも、シマウマも、ゾウも、ヌーも、鳥たちも、ライオンも。やがて動物たちは彼を「百獣の王」と呼ぶようになりました。
 サバンナは今日も晴れ渡っていました。

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