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2004/10/30 (Sat) あけずきんちゃん

「ねえねえお婆さん、わたし、沢山知りたいの。今日もいろんなこと教えてね」
「ひょひょひょ。ええよ。何でも聞くがええ」
「ねえお婆さん、どうしてお空は青いの?」
「みんなが青いって言うからだよ」
「ねえお婆さん、どうしてお砂糖は甘いの?」
「脳がそう判断しているからだよ」
「ねえお婆さん、どうしてお婆さんは物知りなのにいつも寝ているの?」
「それは足が悪いからだよ」
「ねえお婆さん、足が悪いなら町のお医者にかかればいいのに、どうしていつも一人で寝ているの?」
「お金を持っていないからだよ」
「ねえお婆さん、どうしてそんなに耳が大きいの?」
「福耳だからだよ」
「ねえお婆さん、どうしてそんなに目が大きいの?」
「お前の顔をよく見るためだよ」
「ねえお婆さん、どうしてそんなに毛深いの?」
「そこらへんはちょっと触れないでくれるかねえ」
「ねえお婆さん、どうしてそんなにお口が大きいの?」
「それはお前に真実を告げるためだよ!」

 そう言うとお婆さんはびょばっと起き上がりました。
「ねえ赤ずきんや。お前は生まれてこの方、何も知らずに生きてきたねえ。でもそれも今日まで。今日はお前の誕生日だろう? お前もこのおばばに聞いてばかりでなく、自分で物事を見て聞いて触れて考える時期がやってきたんだよ。お前の名前は赤ずきんではないよ。それはお前が赤い頭巾をかぶっているからに過ぎないのさ。ほら、これをやるよ」
「…これは、白い頭巾?」
「いいや。この頭巾の色は、お前の人生でお前が決めるんだよ。言ったろう? 皆が青いと言えば空は青いし、皆が黒いと言えば闇は黒いんだ。お前はその頭巾をお前の色に染めるがええよ」
「…でも、お婆さん、わたし何も知らないから…」
「大丈夫。生きていくのに最低限必要な知識はもう喋ったよ。お前は利口だから覚えているだろう? あとはその応用さ。昔々、あたしも赤い頭巾をかぶって町を歩いて暮らしていたものさ。赤い頭巾をかぶった女の子は、いつも本当のことを知りたがるからね。お前もその血筋を引いているのさ。行ってくるがええ、赤ずきん。…いや、真っ白な頭巾のお前よ」
「お婆さん、わたし、赤ずきんでいいよ! だからお婆さんのお話をもっと聞きたい!」
「ダメだよ。次にお前がここに来る時は、わしにお前だけの頭巾の色を見せてくれるときだよ」
「わたしだけの…頭巾?」
「そう。行ってくるがええよ。大丈夫。町はいつも赤い頭巾の少女に優しいからな。ほら、最初はりんご売りでもやったらどうじゃろ」
「…お婆さん。わかったわ。わたし、行って来る!」
「行って来るがええ。わしは待っとるからの。いつまでもここで。次はお前がしてくれる話を楽しみにしとるからの」
「はい! 行ってきます!」

 そうしてわたしは、旅に出ました。白い頭巾はわたしの頬と同じように少しだけ色が付いて、今は朱色。この先、どんな色に染まっていくのだろう、そう思うだけでわくわくしてきます。
 今のわたしは、朱(あけ)ずきん。明日のわたしは、もっといい色でありますように。

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2004/10/19 (Tue) 死者夜這い

 九州ローカルなおまじないの1つに、「死者夜這い」というのがある。
 おまじないマニアなわたしは、先日、やっとその方法を手に入れた。九州の神社にだけ伝わる秘伝中の秘伝で、その派生形は各地に伝わっている。岐阜でもそれは見かけられたし、北海道にも似たようなのがあった。
 死者の顔をまたぎ、呪術の言を放つ。
 やり方はそれだけだが、効果はまったく正反対の2つを持つ。正しく行えれば死者は蘇るけれど、間違ってしまえば死者はゾンビと化し、術者も呪われてしまう。そもそも人を行きかえらせることなど出来るはずもないのに、どうして昔の人はそんなことを思いついたのだろう。考えられる要因は2つだ。ひとつは間違った方法をわざと実行させて術者に呪いをかけるため、もうひとつは希望的観測だ。切なすぎ、悲しすぎる死別なら、もしかして生き返るかも、と願う人が術にもうひとつの意味を込めたのかもしれない。結果として術者が呪われて近いうちに死んでしまったとしても、死後の世界で再会できるのなら本望なのかもしれないし。
 さて、この方法、九州ローカルなはずなのに伝承は古くヨーロッパ、中国、トルコ、アメリカ、そして日本各地にも見られるのだ。ヨーロッパでは死者が吸血鬼になるという伝承、中国ではキョンシーになるという伝承、トルコやアメリカでは不死のゾンビになるというし、日本では幽霊あるいは鬼になるということだった。それらを年代順に並べてみると、どうやら日本で起こったおまじないだったことがわかる。文献によれば平安時代から始まったこの術法は元の時代に中国に伝わり、それからトルコ、ヨーロッパへと中世に流れ、最終的にアメリカで19世紀にゾンビというモンスターを生み出すに至った。逆に云うと、吸血鬼伝説やゾンビの恐怖という、中世におけるモンスターホラーの根源がこの九州ローカルの「死者夜這い」なのだ。
 この方法がどうしてこんなにも世界中に広まっていったのか、考えられる理由は2つだ。ひとつには先述の通り、術者を呪いにかけたいがためのこと。もうひとつはまったく逆で、戦争の多かった時期に親しい人を亡くしたことで藁にもすがる思いで生き返って欲しいと念じたことだ。
 …それらの行動の結果がどうなったかは、今さらいうまでもない。
 術の全ては失敗したのだ。だから世界中でモンスターが溢れた。血をすすり肉を喰らうモンスターたち。それらは全て、悲しい理由でなくなった肉親たちだったに違いない。

 どうしてわたしがそんな危険な術を手に入れたかというと、大好きな妹が死んでしまったからである。それも、私のすぐそばで。くそったれな車に轢かれて。
「ねえ、生き返って」
 深夜2時、わたしはノートに写した術の言葉を読み上げながら妹の身体をまたいだ。顔はない。事故の際にくしゃくしゃになってしまっていた。こんな身体のまま生き返られても困るけど、でも、わたしにはそれしか方法がなかった。中世のひとたちの悲しい気持ちは、痛いほどわかった。
 わたしの血や肉や、顔も命もあげるから、ねえ、どうか、生き返って。

 こぼれた涙は、彼女の身体にぴちりと触れた。彼女の手がびくんと動く。めきめきと筋張った腕が、なんだか青白く染まりながら動き始める。

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2004/10/17 (Sun) 鰯

 今日の夕飯のおかずは、いわし。マイワシだか何だか分からないけれどスーパーでとことん安かったので妻が買い込んできたのだと言う。今食卓に並んでいる以上に冷凍庫に入っているらしい。この先、何日かはいわしを食べさせられることになりそうだ。魚は嫌いではないが骨をより分けなければいけないのが面倒で、私はどうも魚を率先して食べたいとは思わない。いわしは旬なのだろうか、と箸でちょいとつまんでその白身をライトに透かしてみたりなどしてみたが、私にとってはどれもこれも同じ魚でしかないのだ。
 確か、「さかなへんによわい」がいわしだったはず。鰯。大量に上げられて一匹数十円で叩き売りされ、私のような骨を面倒がる人間に食われるだけの一生…それはどんなものだろう。かといって一生を海の中で過ごせれば幸せだろうか。
「何考えてんの?」
 ぶすっとした顔の妻が私を睨む。子供たちはすでに食事を終えており、部屋でゲームに熱中している。骨も皮もばらばらになって皿の上に散らかしてある。食べたのはほんの少しだ。もっと身をちゃんと食べてやらないとこのいわしに失礼じゃないか、などとセンチで馬鹿なことを思った。
「いや、いわしのことを」
「いわしのこと?」
「ああ。こうして無茶苦茶に食われてこいつらはどう思ったかなってさ」
「…どうも思わないわ」
 妻は少し考えて、言った。
「知ってる? いわしって。群れになって泳いでるのよ」
「聞いたことはあるな」
「100万匹の群れよ。それが網にかかって漁師に上げられるの。それを可哀想だなんて思わない方がいいわ」
「…どうしてだ」
「100万匹いても、1匹さえ自分の考えを持ってないのよ。身体が海流に合わせて動くだけ。それが100万匹の群れになってるだけ。波が変われば身体の向きも変わるの。みんなが右を向いたから右を向き、左を向いたから左を向くの。それだけ。魚辺に何が弱いって、いわしほど頭の弱い魚はいないわ」
「…そうなのか」
「ってことを、高校生のとき、ものの本で読んだの。それから私は自分で考えるようにって思って生きてきたの。あなたはどう? 自分で考えられてる?」
「ははっ。自分で…か。どうかな」
 鰯の身をほぐしながら、私は考えた。会社勤めをするようになってから、仕事以外で自分の頭を使うことがあっただろうか。人の言い分に流されて考えを変えてきたりはしなかっただろうか。あるいは、沢山の人と同じ方向にただ歩いてきただけではなかっただろうか。
「鰯の人生は、俺に通じるものがあるな」
 ふん、と笑って妻は皿洗いを始めた。二階にいる子供たちのことを少し思う。いわしの稚魚、しらす。彼らがしらすやめざしのような人生を送らないようにさせるためには、私がまず頑張らなければいけない。
 ここにあるこの青魚はせめて完食してやろう。変な決意をやどした私だった。
 秋がふけていく。

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2004/10/13 (Wed) suicide

 高校生のわたしが、親がしてくれる沢山のことをウザイと断じて自身の命の在り方さえも決め付けるのはおかしいことだろうか。今日、目が覚めたのは病室のベッドだった。まただ。今月で2回目。もう週一くらいのペースでわたしはこの病院に来ていることになる。いいかげん愛想も尽かされただろう。でもそれでよかった。わたしになんて構わなければいいのだ。誰も。

 また未遂に終わったんだから、ホントは本気で死ぬつもりなんてないんじゃないのー?

 …あれが医者の台詞だとは思えない。でもそれが真実だからこそ、わたしは生きることに絶望するのだ。助けて助けてとうなされるようになってから、誰もわたしを助けようとはしてくれなくなった。死にたいと呟くようになってからは誰も本当の心配を向けてはくれなくなった。いつもわたしの自殺が未遂に終わるのは、わたしが本当はやっぱり生きたいと思うからなのだと医者は言った。そうかもしれない…けれど、やっぱりわたしは死にたいと思う。強く強く願うのだ。
 理由?
 だってわたし、死にたいもん。

 昼過ぎ、屋上に出て風を浴びながら考え事をしていると、ボール遊びをしていた子供がボールを追いかけて柵を越えてしまった。屋上の柵は…といっても柵といえるほどの役目もないけれど…高さ1メートルくらいの金網で、ボールがバウンドしただけでそれを飛び越えてしまう。そこから端までは平坦で、うっかり足を滑らせたら簡単に地面に落ちてしまうのだ。前にわたしが落ちたときは足の骨折だけで済んでしまったけれど。
 なんてことを考えながらその子を追ってみたわたしは、ギリギリの淵で立ってまたボール遊びを始めた子供を見て背中がぞくりと冷たくなるのを感じた。
「ねえ、一緒に死んでくれる?」
 ひどく冷静にそう言ったわたしは、なぜか屋上へやってきた看護婦さんがわたしたちを見つけて何か言っているのを遠目に見てから、子供の背に軽く手を添えた。
「いやだよ! ぼく死なないもん!」
 子供はぴょいとわたしから離れ、看護婦さんのところへ走り去ってしまった。わたしは愚鈍な動きでそれを見送り、ハハァと軽く笑って下を見た。

 誰もわたしに強力なんてしてはくれない。当たり前のことだ。

 ――どうして死にたがるんだ、何に困ってるんだ、悩んでいるなら言ってみろ、たまには人に助けを求めてみろ、お金ならあげる、こんなに愛しているのに、…、…。
 今まで聞いてきた誰かの声が聞こえる。耳の中で鳴っている声かもしれない。わたしが死にたがる本当の理由? それを知りたがる人はたくさんいる。それを知ることでこのわたしの自殺病を止められると思っているのだろう。でも、それは間違いだ。
 わたしが死にたいのは、そうやってみんなが優しくしてくれるからだ。…余計すぎて大きすぎるお世話で。そんな空回りした皆の気持ちにわたしは笑顔で答えなければいけない。本当のわたしは泣いているのだ。本当は…。泣いていて。
 だからわたしは死ぬしかなくなるのだろう。誰かひとりでいい、本当のわたしを知って欲しいと願う。それがわたしの死ぬ理由だ。理解してくれなくてもいい。ただ本当のわたしのことを聞いて欲しい、そう願うのだ。
 風が気持ちいい。落ちていくのは飛んでいくのとは全然違うけれど、わたしはあえて飛べたらいいな、なんて思いながら。落ちた。

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2004/10/02 (Sat) 埼玉ブレイク工業

 大宮を練り歩く俺たち3人、ヨウチェケラッチョ! って古いか。悪ぃ悪ぃ。なんたって俺らはここいらで最悪最強のチーム! 人呼んで「埼玉ブレイク興行」! チームの指針はたったひとつ! いくぜお前ら! ヨウチェケ!

「ぶっ壊せ!!」

 家を壊すぜ 橋を壊すぜ 戦車を壊すぜ ビルを壊すぜ ペンタゴンを壊すぜ 愛を壊すぜ 人間関係を壊すぜ 子供の夢を壊すぜ ダダッダ~


 case.1 子供の夢を壊すぜ(1)
 いまどきショップの前で駄々をこねるガキがいるとは信じがたいが、泣き叫んで親を困らせている子供がいる。オモチャ買って~、などと阿呆なことを言っているが、親はどうにかなだめようとして「サンタさんがプレゼントしてくれるからもうちょっと待ちなさい」と言っている。ここは俺たちの出番だ。
 子供のそばまでさりげなく移動し、親が目を離した隙に子供に耳打ちする。
「サンタさんなんていないよ。あれはお父さんお母さんがやってるんだよ」
 見た感じ小学校低学年の子供だが、いきなりこんなことを言われては動揺せざるを得ないだろう。そしておそらくこの子は知るのだ。俺の言葉が本当のことだと!
 俺がまたさりげなく離れると、子供はふぇっ、ふぇっ、わーーんと泣き出した。どうだ、こんなもんだ。楽勝!

 case2.子供の夢を壊すぜ(2)
 ディズニーランドへ俺たちがやってきたのは、他でもない、こんなに壊しがいのあるスポットはないからだ。まずはいきなり入り口近くのお土産ショップに入る。女子高生がキャーキャー言いながらちょっと値が張るキーホルダーやぬいぐるみを見ている。また俺はさりげなく移動し、そっと耳打ちする。これが気付かれないのが俺たちのやり方だ。
「このぬいぐるみ、原価はXX(ピー)円で、メイドインXX(ピッピー)だよ」
 はっとして女子高生が周りを見回した瞬間には俺たちはすでにいない。他の客に溶け込んでいるという寸法だ。そして軽いショックを受けた女子高生はぬいぐるみを買うのをやめ、外に出るのだ。そしてたまたま見つけたネズミのミッXーと一緒に写真を撮ろうとしている。チャンスだ。
 スザザザザ、と走りより、シャッターチャンスの瞬間にミッXーの頭をスポンと抜く。着ぐるみははがれ、中から男が出てきた。そしてカシャッ。ナイス写真だ。これで彼女は一生トラウマを背負って生きていくに違いない。

 case3.人間関係を壊すぜ
 街を歩いているカップルに、そっと耳打ちする。
「あんたらよくそんなんでつりあってるなぁ。苦労してる方は丸分かりだけどなぁ」
 はっとしてキョロキョロするカップル。しかし俺はもういない。そして喧嘩が始まるのだ。まずは小さな言い争い。それが発展し、信号が2回変わる頃にはビンタが出て別々の道を行くに違いない。ははは。

 case4.愛を壊すぜ
 電車の中でラブラブしているカップルを発見。よし、破壊だ。
 ついついついーと近づく。昼間の埼京線、人は少ない。だからって堂々とキスしたり胸を触ったりアハーンとか言ってるんじゃないよ。殺すぞ。
 で、近づいて見ると…ああ、このミッションなしね。ごめん。
 ちょっと顔が、さ。あまりにも似合いすぎてて。可哀想すぎて。あー。二人の世界に入るしかないよなあ、確かに。しかし不細工なカップルに限って人前でラブラブしたがるけど、それを見ても全く羨ましくないのはなぜだろう? というかむしろ勝った気になるのはなぜ?
 破壊するまでもなく、今回は完了。

 さて、次の獲物を探そう。

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