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2001/07/23 (Mon) ウサギとカメ

 その日、彼は通算108回目の失恋をした。
 22年間の人生を比べるのなら、彼ほど女運がない男はいないと言っても過言ではなかった。彼はその日も同じように、帰ってからすぐに布団にもぐりこんだ。眠ることでしか自分を癒す方法を知らなかった。友人に言っても馬鹿にされるだけだと彼は知っていた。
「神よ…」
 興奮して眠れない。やり場のない憤りをどうすればいいのかも分からない。涙が溢れるがそれをこぼしてはいけない気がした。
「神よ、あなたは残酷だ。いっそ俺が…、いっそ俺が女なんかに興味を持たなければ!こんな不幸を!悲しみを!憤りを味わわずに済んだものを!どうしてあなたは俺にばかり試練を与えるんだっっ!」
 布団の中で、彼は叫んだ。

 気がつくと、朝になっていた。7月の午前8時はあまりにも暑く、寝汗もハンパじゃなかった。いつものようにとりあえず顔を洗う。しかし何だか体がベトついている気がする。仕方なく、彼はシャワーを浴びることにした。シャワー後、部屋の鏡に映る自分を見て、彼は息を飲んだ。
 …誰だ、こいつ…!?
 そこに映っていたのは、昨日までの冴えない大学生ではなく、まるで絵に描いたような美形の男だった。顔をつねったり叩いたり、鏡の前で変なポーズをとってみたりして、彼はようやくそれが自分だと気付いた。
「おお、神よ…」
 変わっているのは首から上だけらしかった。しかし構わない。彼の脳裏に“復讐”の2文字がよぎった。

 お気に入りのTシャツと穿きなれたジーパンで街に繰り出す。真夏日というのに、まるで汗をかかない。神は俺に最高の肉体をプレゼントしてくれたのだ。こうなったら今まで俺を振りまくった女どもに復讐してやる!けっ!ざまあみろ豚どもめ!
 …豚ども?
 彼は、気付いた。うっかり果たしてしまった神との契約、その内容。彼は最高レベルの外見を得ると同時に、女性に興味を失ってしまっていた。勿論それは男に興味が沸いたという意味ではない。まるで無関心なのだ。まるで老人を見ているかのように、無関心…!とりあえずナンパしてみると、面白いように成功した(番号ゲットあるいは食事への誘いが)。
 神か、あるいは悪魔との契約により手に入れた無敵のウサギの皮。昨日までの俺は努力しても報われなかった亀。例え道の途中で休んだとしても、努力というレベルでは追いつけやしない圧倒的な差。しかし、しかし…!
 復讐の相手を失った彼は、呆然と立ち尽くした。何度も豚に声を掛けられるも、何も感じなかった。これは、そんな数奇な運命を持った男の物語である…。

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