--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2002/10/15 (Tue) アンダーソン

 彼が救世主と呼ばれるようになったのは、やはり奇跡を起こしたからだろう。
 彼はずっと前からこの場所にいた。毎週日曜になると黒いローブを身にまとい、駅前のコンコースで鈴をチリチリ鳴らしながら立っていた。そして腰から下げた籠に小銭を入れてくれる人に、奇跡の左手をかざしていた。
 彼がかざした左手からは、金箔のような粉が現れた。どこかの学者の研究によれば、それは純金に近い金だったという。それが知れ渡ってから、彼は有名人となった。しかし、彼はいつでも金を撒き出せはしなかった。彼が金を出せるのは、籠に小銭を入れてくれた人に対してのみだった。本当は出来るのかもしれないけれど、彼は金を「返す」ことにしか使わなかったし、量的にも1グラムにすら満たない、儚い金箔だったから、人は彼を凄い人物だとは思いながら、小銭すら捧げることなく、通過していった。
 ある日、シャツをジーパンに入れてリュックから丸まったポスターを覗かせた、太った眼鏡の男が彼の前に立った。そしてガマグチの財布から100円玉を数枚取り出し、言った。
「金粉はいいから、僕の望むものを出してくれ!」
彼はうむ、と頷いた。
「ぼ、ぼ、僕の言うことを何でも聞いてくれる、身長145センチで胸が膨らみかけてきて、でもエッチなことは沢山知っていて毛穴のない、髪は緑色でパンツにはクマかウサギが描いてあるような女の子を出してくれ!」
 彼は一瞬、この男にすんげぇメンチをくれたが、すぐに平静に戻った。
「効果は今から二時間。よいかな」
「は、はい! 早くしてくれぇ」
彼は左手を高くかざし、エイヤと叫んだ。次の瞬間、彼の前には身長145センチでTシャツにキャミソール、ジーンズのスカートをはいた緑色の髪の少女が立っていた。
「や、ありがとうございます! これはお礼です!」
男はさらに一万円札を籠に入れ、少女の手を取って走り去っていった。
 それが、きっかけだった。
 すぐに噂を聞きつけた人が訪れた。彼は全ての人の欲望を聞き、二時間だけ存在する奇跡を生んでいった。何でも言うことを聞く少女、少年、現金、銃、麻薬、世界一美味しい食事など、ありとあらゆる『存在しないもの』を生み出していった。それらは全て、二時間後には消え去ってしまっていた。
 彼が救世主と呼ばれる奇跡を起こしたのは、ある日現れた一人の少女の願いを聞いたからだ。
「世界を救ってくれるヒーローを出してください!」
 彼はいつもどおり、手をかざした。次の瞬間、彼の前には5人のコスプレ戦隊みたいなのが立っていた。彼らは少女には目もくれず、「行くぞ!」と掛け声をかけると凄いスピードで走り去っていった。
 それから2時間以内に、世界中の犯罪者、支配階級、宗教家、王とその一族、政治家、高利貸し、悪徳商人、いじめっ子、クスリの売人、戦士、軍隊、危険思想を持つ者、不正を行う全ての人が、虐殺された。
 全て、必殺技で一撃のもとに即死だった。
 それから、世界は混乱に包まれた。数日後、また少女がやって来た。
「世界の混乱を収める救世主を出してください!」
彼が出したのは、白いローブをまとった彼とそっくりな男だった。
 彼にそっくりな男は、その場で彼を殴った。彼は気絶したのか、起き上がらなかった。そっくりな男は右手をかかげた。そして手から出る光を自分の身体に浴びると、どこかへ行ってしまった。それから数日後、そっくりな男はこの国の軍隊を率いて世界を一気に占領してしまった。世界はその男のものになった。
 そんな伝説が、この世界には、ある。そのそっくりな男というのは現世界大統領で、ある日突然現れて以来、40年以上も現役で世界の頂点に君臨している。大統領の側近には、大統領の双子の弟と言われる人物が居て、彼が起こす奇跡を大統領の起こす奇跡で覆った時、本来なら2時間で消えてしまう幻想が永遠に形を残すものになるらしかった。しかしテレビなんかで見るその弟というのは、もうかなりの老人だ。どうして双子なんだろう。親子じゃないのか?
 しかし事実、24時間365日体制で街を見張り、悪人がいれば即処刑するシェリフなんかが現れたのも、大統領が現れて以来だ。世界にはもう犯罪は起こらない。起こった瞬間に犯人は処刑される。
 噂によると人々は、大統領に反乱をけしかける気らしい。不老不死のシェリフが沢山いる中、解散した軍隊を集めてシェリフとその上の5人の戦士というポリスを倒そうという計画だ。でもきっとそれは失敗に終わるだろう。
 もし彼らを止められる者がいるとすれば、あの老人……救世主と呼ばれている黒いローブの男だけだ。

スポンサーサイト

読みきり | trackback(0) | comment(0) |


<<ヤンキー母校に帰る | TOP | 甲賀忍法>>

comment











管理人のみ閲覧OK


trackback

trackback_url
http://sweetstorylatte.blog35.fc2.com/tb.php/160-7733a4ea

| TOP |

プロフィール

Author:ryow

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。