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2002/10/18 (Fri) ヤンキー母校に帰る

 あれは僕が中学生の頃。
 今思えば反抗期もいいところで、何かあったらキレて暴力を振るい、学校の窓ガラスなんかをバットで割りまくっていた。2日に1回は喧嘩して相手の鼻を折ったり顎を砕いたり学ランを破いたりしていたヤンチャ坊主だったけれど、そのたびに父親が学校や相手方の家まで謝りに来ていた。僕は生徒指導室とかで、隣で頭を下げる父をかっこ悪いと思い、足を組んで外を見ていたものだった。先生は「そんなんじゃ将来、ダメな大人になるぞ!」と繰り返した。
 ダメな大人になってしまってすみません、みなさん。
 ある日、クラスで席替えがあった。そんなもんがあろうがなかろうが僕の席は窓側の一番後ろだと決まっていたので、そのときも腕を組んで空を見ていた。授業なんか真面目に聞いたことなんかなかったから、黒板を写したりすることもなかった。
 その日、教育実習生がやってきた。その中学が母校だという、大学生の優男だった。僕は彼をナメてかかり、やはり授業など無視して空を見ていた。チンダル現象が美しい空だった。
「おい! そこのお前! 一番後ろのお前だよ! 訊いてんのか!!」
そっぽを向いていると、チョークが飛んできた。チョークは僕の机に当たった。僕はキレて席を立ち、教壇までのしのしと歩いた。
「なんだその歩き方は!」
僕が殴りかかろうとしたとき、彼は僕を思い切りぶん殴った。
「この腐った蜜柑野郎が!」
彼はそう言って唾を吐いた。そのとき思った。こいつは違う。普通の教師じゃねぇ。
 その日の夕方。やっぱり生徒指導室に呼ばれた。律儀に行くのもほとんど日課だった。
「お前……先生にはわかるぞ。お前の言いたいことがな」
「あん!?」
「一番後ろの席じゃ、黒板が見えないんだろう?」
「なんだと?」
 ──図星だった。
「さあ、先生と一緒に眼科へ行こう。コンタクトを買ってやる。眼鏡じゃダサいだろう? 不良なら不良らしくカラーコンタクトをキメたらどうだ? ピアスなんかよりよっぽど自己主張できてるだろ」

 数時間後。赤のコンタクトを入れて視界がハッキリした俺は、初めて彼の顔をまともに見た。
「どうだ、よく見えるか?」彼は満面の笑みを浮かべていた。
「うるせぇな。これはもらっといてやるよ。ありがとな」
家に帰った。それ以上、彼の真っ直ぐな目は見れなかった。
 父が帰ってきたとき、どれくらいぶりだろう、父をまともに見た。
 僕を生んですぐに母を亡くし、男手ひとつで僕を育ててくれた父。しわの目立つ背広や、アイロンのかかっていないワイシャツ。それでもきちんと締めてあるネクタイ。疲れた背中と、年季の入った革靴。「ただいま」と笑って僕に言ってくれたその顔。顔さえまともに見ていなかったから、髪に白髪がこんなに混じっているとは知らなかった。
「おかえり……」
それ以上何も言えなくなり、僕は部屋に篭った。
 ──どうだ、よく見えるか?

 それから僕は、バットを持つのは部活だけにした。授業中は真っ直ぐ前を向くようにしたし、席替えも参加するようにした。放課後の掃除も、図書委員も、マラソン大会にさえ参加した。
 赤い目の生徒会長。いつしか僕はそう呼ばれるようになった。僕が卒業した次の年、あの教育実習生が中学の教師として赴任したらしいことを聞いたが、特に挨拶には行かなかった。
 しかし、彼の言葉は僕の胸に今も響いている。
 目に入るものを真っ直ぐに見つめ、受け止めること。ときどきはやっぱり空を見上げて物思いにふけってしまうが、それでも僕は、僕の目線で……他人(ひと)の目線で、これからも真っ直ぐな気持ちで色んなものを見つめていこうと思う。
 あの秋晴れの空は、今もこの赤い瞳に映っていますよ、先生。

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