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2004/01/02 (Fri) プレゼント

 目の見えない彼女にカメラをプレゼントしたのは、残酷だったかもしれない。
 仕事を辞めてカメラ一筋で生きていこうと決めてから4年、やっと僕の写真が認められた。スクープを狙って新聞屋に売っては小遣いを稼ぎながら、僕が切り取る風景、ひいては僕の世界、というものを構築していくという作業を続けた。それは過酷で、自虐的で、羞恥にまみれたものだった。個展を成功させてプロの称号を自称ではなくした僕は、それまで使っていた古い型のカメラをプレゼントしたのだった。
 カメラといってもそれはデジカメだ。デジタルカメラという機械が市場に出回ったばかりの頃に頑張って買った200万画素のカメラ。それは当時の技術の最先端を行く「一眼レフ型デジタルカメラ」だったけれど、今じゃ携帯電話のカメラにも劣る性能だ。ブレるし容量は少ないし電池も全然持たない。そんなゴミみたいなカメラだけど、僕の気持ちを贈るという意味では最高だと勝手に思いこんでいた。
 そもそも、写真を撮るという行為は日記を書くことにも似ている。自分の世界をさらけ出す、あるいは形として小さなキャンバスに収める、ということ。それは世に出さなければ趣味か自己満足と同じで、言ってみれば鼻歌みたいなものだった。
 高校を卒業して初めて車を運転したときの事故で光を失った彼女は、「文章を書くことも写真を撮ることも歌を歌うことも同じに思えるようになっちゃった」と言った。僕にはその意味がどうしても分からなかった。
 個展最終日の打ち上げを終えて帰ってきて、その日はすぐに眠った。
 次の日の朝、前日にポストを確認してなかったことに気付いたのは撮影所に出かけるときだった。ハガキよりもちょっと小さい手紙が一通届いていた。裏返してみて、不覚にも僕は笑ってしまった。それはプリントした写真だった。写真の裏に切手を貼って住所を書いて、表に一言メッセージを書いて送られてきたのだ。
 写真は、彼女からだった。
 年賀と書いてない、しかも定形外のハガキのせいで正月には届かなかったのだろう。それともこれは最初から年賀状じゃないのかもしれない。白いサインペンで書いた綺麗な字が、写真にいい味を与えていた。

 ねえ、わたし、上手に笑えてる?

 ピースサインを構える彼女は、微笑まずにはいられないほど見事にピンボケした笑顔だった。

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