--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2004/01/08 (Thu) step in step

 駅前の靴屋は、客引きがいつもうるさい。
 メガホンを持って大声で怒鳴りながらスニーカーの安売りをうたう。それはいいのだけれど、頑張ってるわりに客はあまり入っていないようだ。駅から一番近い、ほとんど一等地にあるショップで品揃えもそこそこだというのに。何が悪いかは分からないけれど、その客引きの元気だけがとりえで、ほかに売りになるようなものはないみたいだった。
 ある日、いつもの客引きがマスクをしながらメガホンで叫んでいた。
「スニーカー全品30パーセントオフでーす!」
いつもの台詞だけれど、彼の声はかすれていた。まるで路上で歌い疲れたギターマンのように、ブルースを歌い出しそうなくらいに、それしか言葉を知らないオウムのように、かすれていた。
 彼から10メートルほど離れた場所で待ち合わせをしていた僕は、ときどき額に手をあててふらふらしている彼を見ながら、生きるってことは大変なんだなぁ、と思った。それはもう、ほとんど「励まし」だった。
 きっと高熱にうなされているんだろう。喉も腫れてろくすっぽ声も出ないんだろう。
 けれどいつもどおりに声を張り上げる彼は、自分の身の上の辛さなどおくびにも出さず、ただひたすらにスニーカーが30パーセントオフであることを叫んでいた。
 朝9時から夕方6時まで、途中休憩をとりながらでも叫び続ける彼に、きっと駅を利用する人全員が励まされているんだろう。
 朝には「いってらっしゃい、今日も元気で」と。
 昼には「こんにちは、今日もいい天気ですね」と。
 夜には「お疲れ様、ゆっくり休んでまた明日」と。
 スニーカーなんてどうだってよくなってしまう、彼のブルース。変わらない台詞に込められた励ましの言葉たちを受け止め、勇気を貰う。それを直接返すことは出来ないから、このくたびれたコンバースを今度、新しいのに変えようか。
 少しして、彼女が来た。手を繋いだ僕らは駅へと入っていく。
 じゃあ、またな、ブルースマン。お前が声を張るなら、俺も落ち込んでなんかいられねぇよな。今日は休みだけれど、明日からはまた俺も声高に叫ぶよ。俺らが生きてるってことを、嗄れ声のブルースで。

スポンサーサイト

読みきり | trackback(0) | comment(0) |


<<くだらない歌 | TOP | プレゼント>>

comment











管理人のみ閲覧OK


trackback

trackback_url
http://sweetstorylatte.blog35.fc2.com/tb.php/176-04889c9f

| TOP |

プロフィール

Author:ryow

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。