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2004/01/25 (Sun) スリーピース

「ねえ、たまにゃこっち見たらどうだい? キミの背中はもうずいぶん傷だらけだよ」
 僕の一歩後ろを歩く彼に言ってみる。彼は力なく微笑むけれど、結局こっちを見ようとしない。僕はいつも彼のことや僕の前を歩く彼女のことが気になって仕方がないのでキョロキョロしながら歩く。おかげで道に迷いそうな二人をどうにか僕の視界に収めておくために右往左往でてんてこまいだ。
「おーい、早く来ないとおいてっちゃうぞぉ?」
 少し前を行く彼女が笑う。彼女が走り出すとそれはもう凄いスピードなので僕らは追いつかない。頑張って走るけれど、後ろの彼は僕に手を引かれながら後ろ向きにふらふらついてくるだけだ。いつも疲れるのは僕。けれど僕らがたまに交差点にさしかかったときは、どの方向に行くかは僕が決めることができる。
「ねえ、どっちに行くの?」彼女が微笑む。
「別にどっちでも構わないよ」彼が笑う。
 僕はといえば、いつも決断を迷う。あんまり迷いすぎた時は彼女が勝手に進んでしまう。細い足でドアを蹴っ飛ばしてどんどん先へ進む。素足の彼女の足跡を僕はなぞる。だから彼女の足跡はいつも残らない。振り返ってみると僕の足跡は彼にしっかりと踏みつけられているから、結局僕の足跡も残らない。その代わり彼の足跡は、今までの道の全てにしっかりと残っている。
 辺りを見回しながら歩く僕がときどき目にするのは、彼と彼女が「謎の男」と呼んでいる紳士だ。あいつは僕らの行く末をまるで知っているかのようにいやらしく笑う男だ。僕はこっそり、彼に聞こえないように呟く。
「ディスティニー男爵、僕らの足跡はアンタの決めた道なんかにゃ残さないからな」

 僕らはいつも、思い思いのステップで、思い思いのスピードで進む。
 いつも笑ってる目の前の彼女、ミス・トゥモロー。
 いつも傷だらけで泣きそうな彼、ミスター・イエスタデイ。
 いつも迷ってる頼りない僕、トゥデイマン。
 僕らの旅は、いつ終わるだろう? いつでもいいさ。ねえ、ミス?
「そんなこと分かるわけないでしょ! 下らないことばっかり考えてないでほら、見てみなさいよ! こんなに広くて輝かしい道、止まる気になんてなれないでしょ?」
 たまにゃ休もうよ、なんて僕が言うと今度は後ろを歩く彼が言う。
「まだ休む時じゃないよ。全然疲れてないさ。見える道が明るいうちは歩こう?」
 やれやれと肩をすくめる僕が見たのは、ミスが行こうとしている“輝く崖”。彼女はいつも危険な方に向かう癖がある。リスクの高い道はすごく美しく見えるもんだ。だから僕は少し離れたところからその道を見て、それが間違ってんだってことを教えてあげる。
「おいこらミス! そっちは間違ってるだろ!」
 あららと口を押さえて照れた彼女は、だけど悪びれた様子もなく、まるで何もなかったかのように方向を変え、歩き出し、そして、笑った。

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