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2004/02/10 (Tue) 宝石箱

 わたしの部屋には宝石箱が飾ってある。由緒ある骨董品らしく、先祖代々受け継がれてきた一品だ。ただし箱には鍵がかかっており、その鍵の在り処をわたしは知らないので中身が何なのかは知らない。子供の頃によく「開けちゃだめですよ」と言い聞かされていたから、相当大事なものなのだろう。それなら金庫にでもしまえばいいのに。
 キラキラと輝く飾りがとても綺麗な箱。箱だけでも相当の価値があると思う。質屋に持っていったらいくらになるだろうと考え出したのは、わたしが大人になった証拠だろうか。大人は汚いと思う。

 そういえば、子供のころのわたしは大事なものをいつもお気に入りのジャンパーのポケットに詰め込んでいた記憶がある。こうして箱か何かに収めておけばいいのに、毎日着るジャンパーにビー玉とかお菓子とかてんとう虫を詰め込んで、ポケットをパンパンにしていた。そのポケットにはファスナーがあって、わたしは大事なものを入れて閉めることはあっても中身を確認するために開けることはなかった。だから中に何が入っているんだっけと思ったりしながらも開けなかった。
 そのジャンパーは、次の春に洗濯されるときにポケットの中身も全部捨てられた。そのときわたしは泣いたんだと思う。けど、今度は赤いスカートのポケットに色んなものを入れる癖があったからあんまり悲しくなかったのかもしれない。よく思い出せない。忘れた。

 同じような、ちょっと違うけど同じような「せつない」記憶がある。彼氏と別れたとき、正確には彼が海外へ行ってしまうから待っていてくれと言われたとき、わたしは正直、待てる自信がなかった。彼が最後に渡してくれた紙切れには短いメールアドレスが。一年半で帰ってくると彼は言ったけれど、二年経っても彼は帰ってこなかった。正確には彼からの連絡が、なかった。
 わたしは何に意地を張っていたんだろう。アドレスがあるんだからときどきないし毎日でもメールを交わせばよかっただけのことなのに、若かったわたしはこの二年間で新しい彼氏を作っていた。すぐに別れたけれど、それはわたしの胸の中にまだ彼がいたからだった。それに気付いて、ようやくメールを出してみることにした。二年ぶりのメール。まだ、元気でいるかな? わたしのことを思っててくれるかな?
 少しでも優しい言葉が返ってきますように、なんて思っていた。
 返ってきたのはあて先不明で戻ってきたリターンドメールだった。

 目の前にある綺麗な宝石箱。装飾が煌びやかだから重くて中身が何なのかは全然分からないけれど、わたしが思うにきっと中身は空なんじゃないだろうか。まるでそう、メールアドレスのように。
 鍵がないというのもおかしな話だった。だけど逆に、もしも鍵を見つけさえすれば中に収まった金銀財宝や輝かしい記憶を手にすることができるのだろうか。
 鍵を探しに先祖代々のゆかりの地を探しに行くと家を出た父親。あなたは今、どこで何をしてますか? 鍵を見つけて帰ってきたとき、中身を手にしたらこの十数年が埋まるとでも思っているのですか? それとも、夢を追うことだけが目標になって鍵などどうでもよくなってませんか?

 大人になっていくことを、わたしは、この開かない箱から教えられたように思う。

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