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2004/02/25 (Wed) クッキン・ハート

「今日の御題は、ハンバーグランチだ」
 伝説のシェフの言葉に、見習いたちは戦慄する。次第にざわめき始めた。まさか…あの恐怖のハンバーグか…! シェフの後ろに並ぶ素材人たちの顔色が一気に青ざめた。あれは諦めと絶望の表情だ。
「まず始めに、タマネギだ」
 シェフは素材人を一人選び、パラパラとカルテを見てほくそ笑んだ。そしてマイクを持って素材人の秘密を次々と暴露していく。生い立ち、幼少、成長過程、思春期、初体験、そして今も思う人のことを。素材人のこころがどんどん剥がれていく。
「これが皮むきだ」
 次に、素材人の恋人を壇上に上げ、その人に向けて素材人についてあることないことを次々に暴露していく。素材人は泣き崩れた。壇上の人はやりきれない顔で引っ込んでいった。
「これがみじん切りだ」
 シェフは淡々と進める。次に選んだのは赤い顔をしたニンジン素材だった。同様に皮剥きでこころのガードをはがし、無防備になったところで「今度はすりおろしだ」と言い放った。シェフはカルテを一枚めくり、壇上に素材人の知人たちを上げた。知人たちもまた青ざめた顔をしている。しかし『言わなければ自分が素材人にされてしまう』かのような恐怖のもと、次々に素材人を裏切る言葉を浴びせていった。お前と一緒にいて損をした。時間の無駄だった。騙された。死ね。最低のクズ人間。素材人のこころはぼろぼろになり、その場に崩れた。
「さて次はひき肉だな」
 シェフは次の素材人を選び、壇上に上げた。そしていきなり場にいた全員で彼を指差し、笑い出す。素材人は何がなにやらわからない表情だったけれど、やがて泣き出した。けれど嘲笑と罵声はやまなかった。やがて彼のこころは見事なミンチになった。
「これらを混ぜ合わせ、塩コショウを加える。あとはパン粉だ」
 シェフが適当にとどめとなる言葉を一振り二振りし、彼らのこころを全力で練り合わせた。さらに壇上に現れたもう一人のシェフに向けてこの塊を一握り投げつける。もう一人はそれを見事にキャッチし、投げ返す。
「キャッチボールで空気を抜き、形を整える」
 いい感じに混ざったところで素材を中火で焼き始める。生ぬるい視線と言葉でさらに追い討ちだ。両面を焼いた後は弱火でじっくりと火を通す。もはや素材人のこころのうまみは完全に封じ込められていた。
 フライパンに残った残り汁でソースを作り、見事ハンバーグは完成した。シェフは見習いの一人にあごで指図した。「おい、その残りかすを捨てて来い」
 見習いは抜け殻になってしまった素材人たちを抱えて焼却炉へ向かった。
「さて、出来上がったハンバーグにライスを添えて完成だ」
 ライスになる素材人のこころは純白で純潔だった。見習いたちはこのハートのレシピで作られる料理を美味しいと感じたことはない。けれどこのシェフが王国第一級料理人なのは、彼が作る料理が国王や皇族にとってはたまらないほどの美味を生み出すからに他ならない。
 庶民のこころをこねくり回して作るハートの料理。さて、どんな味がするのかな?

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