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2004/03/02 (Tue) 超精神科

 T大学病院の、地下4階の、一番奥のドア。それを開けるとそこは下り階段。そこを降りると地下5階全体に広がる巨大な研究室に出る。それが「超精神科」だ。
 ドクターは1人。研究員は138人。インターンは3人。患者は連日、どこからともなく噂を聞いて訪れる。ドクターの部屋に通されるのは事前の調査を経て「オペの必要あり」と判断された者だけだ。ちなみにこの科に通されるだけでも、普通ならほとんどサジを投げられるほどの重病を抱えた患者だ。
「こんにちは。今日はどうなされましたか?」
患者は答えない。何も答えない場合が多い。見た目は普通の人だ。外傷もなく、顔色も良い。しかし、服をめくるとへその上に大きな切り傷がある。
 ドクターの部屋は完全なる密室だ。オペに立ち会うインターンとはは10年以上の実務経験のある精神科医だ。10年一区切りということで、超精神科でインターンとしてさらに4年の経験を積む。今いる3人のインターンも、世間では名の通った、有名な医者だ。しかしその誰もが足元にも及ばないドクターが1人、それが超精神科医。全てのドクターの頂点に立つ男だ。
「オペ、開始」
 超精神科医が目を細める。患者はベッドに寝かされ、沢山の管が繋がれている。脳波や精神状況を3Dグラフで表現する巨大な機械がある。イメージを映像と文字で表現できるのだ。それにより意識、無意識を問わず患者の心の様子が丸見えとなる。超精神科医はこれを独自に開発した。精神観察システムのアルゴリズムを書いた彼は、同大学内の工学研究室でこれを実現したのだ。

 オペが始まった。超精神科医の額に付けられたコードが、患者の額のコードにリンクしている。彼が目を閉じると、画面に何かが映った。白い空間だった。その中心に、彼が映った。視点は患者のものと思われる。
 彼が近づいてくるたびに空間はゆがみ、そこから奇妙な手や巨大な壁が生えた。彼はそれをぶち壊し、患者に近づく。また空間がゆがむ。一瞬で患者の周りには大きな壁が現れた。彼はそれをも素手で壊す。空間全てが彼の敵となり、彼を拒む。彼はそれをなぎ倒していく。ついに患者の下に辿りついた彼は、何かを呟いた。
 途端、空間が色に染まっていく。平坦で真っ白な雪景色のような画面に、草や木や花、人、動物や空、存在する全てが描かれていく。患者はそれを拒もうとして空間をゆがませるが、彼は患者の手を握った瞬間、全てが固定された。
 場面が変わった。そこは暗い路地で、患者は複数の男に取り囲まれている。
 相手の顔を認識したとき、いきなり拳が飛んできた。殴られた。血が飛び散る。財布を奪われ、服を裂かれた。そこへ、彼がやってきた。男達を奇妙な光る棒で殴り倒していく。男達は地面に吸い込まれるように落ちて行った。

 彼と患者が目を開けた。画面は真っ暗で、何も映っていない。患者の腹の傷は消えていた。患者は一礼して部屋を出て行く。研究員に連れられ、地上へと戻っていく。その頃には、今自分がどこに来て何をしていたのかという記憶は消えていた。

 数人の男が運ばれてきた。意識不明の昏睡状態らしい。研究員たちはそれを解体し、業者へ売りつけた。臓器、脳、目、腕、性器など、売れるパーツは沢山在る。それが研究室の運営費であり、彼の報酬だ。
 彼は超精神科医。その存在はトップシークレット。心の傷を物理的に治療する男。

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