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2004/03/12 (Fri) あいこちゃん

 クラスに、アイコちゃんという、ちょっと内気な女の子がいる。アイコちゃんというのはニックネームで、本名は何だったか思い出せない。というか、分からない。
 終業式の日の夕方、なぜか教室に僕らだけが残ってしまった。僕は勉強をしていたし、アイコちゃんは本を読んでいた、と思う。
 午後六時を回って、先生が見回りに来た。もう帰りなさい、というようなことを言われた。僕はしぶしぶカバンにノートを押し込み、帰り支度をした。アイコちゃんは無言で立ち上がり、すぐに教室を出て行った。
 駅までの道は同じだったので、それとなく話しかけた。
「あのさぁ、キミ、何の本読んでるの?」
「陰陽師」
「ああ、流行ってるよね、そういうの。俺も知ってる」
「そう」
「で、安倍清明が好きなんだ?」
「好き嫌いで本を選んだりしない」
「そうか。そうだよねー。他にはどんな本読むの?」
「三島」
「ああ、ミシマ。知らないけど、名前は知ってる」
「そう」
「俺はさぁ、さっきまで勉強してたんだけどね。いや、教室は温かいじゃん? 塾とか行ってないからさ、家に帰ったら勉強する気にならないしさ、いつも残って一人で勉強してるんだけどさ」
「そう」
「世界史が苦手なんだよなあ。なんかこう、簡単に歴史を知ることは出来ないかなあ。タイムスリップとかで過去に行って体験すれば早いんだろうけどな」
「タイムスリップで過去には行けないわ。理論的に」
「え? なんで」
「相対性理論。知らないの? 未来へは行けるけど」
「そうかあ。そうだよなー。来年の今頃は、どこの大学に行ってるんだろうなあ、俺。想像もつかないよ」
「そう」
「キミはどこの大学行くつもりなの?」
「行かないつもり」
「そっかあ。人それぞれ、色々あるしね」

 他愛も無いことを話しているうちに、駅についた。ホームが違ったので改札で別れることにした。
「じゃあ俺、こっちだから。キミと話せて、ちょっとはキミのこと分かったよ。じゃあね」
「うん」
アイコちゃんはどこまでも愛想が悪く、ちょっとうつむいたままだった。
「俺、ちょっとキミのこと好きになったよ。キミみたいな人も悪くない」
 その言葉に、アイコちゃんはばっと顔を上げた。
「私はあんたみたいなウザい男は嫌い。何? 何なの? 人の話に共感してる振りして本当は何も知らないくせに。それで、自分が好きなものの話をして、それを押し付けるの? あれはいいよね、あれはあんまりよくないよねって。そんなこと知るかっての。あんたの勝手よ。それに、あんたの将来なんて私には全然関係ない。だから興味もない。相談に乗る気にもなれないし、まともに話をする気にもなれないわ。馬鹿じゃないの? 独り言を聞いて欲しかったら鳥にでも言ったら?」
アイコちゃんはそう言って、ぷいと顔をそむけて電車に乗り込んでいった。

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