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2004/03/20 (Sat) バレンタイン

 街角にある、占いの小部屋。それはプレハブ造りの簡素なものだ。外見は真っ黒に塗られ、ドアは濃い紫なのでうっかりすると入り口が分からない。けれどそこは、よく当たると評判だ。当たる、というのは占いではけっこう重要な要素で、訪ねてきた人の名前が当たること、誕生日が当たること、仕事が当たること、悩みが当たることがまず「凄い占い師」の最低条件だ。この店の主、マリークラリネット和田(年齢不詳・女)は当然のようにこれらをこなす。けれど、自分の名前を当てられたからといってその占い師が言うことが全部真実であるとは限らない。往々にして占いの小部屋に訪れる客は人生相談を始める。結果として明確な答えは、彼らは必要としていない。彼らが欲するのは「黙って自分の話を聞いて頷いてくれる人」であり、「意見の賛同者」なのだ。つまり、占い師はハイハイと頷いていればほとんどの場合の人生相談において、相手に不快な思いをさせることなく仕事を終えられる。相談というのは、客が相談してくることが多い。というわけで人生相談というのはただの愚痴の吐き所でしかないのがほとんどだった。
 今日もまた、一人の女学生がマリークラリネット和田のもとを訪れていた。

「わたし、不安なんです。バレンタインが明後日に近づいているっていうのに、チョコも用意したのに、好きな人に渡していいものかどうか……」
「渡せばいいじゃありませんか」
「だって、もし振られたら、って思うと怖くて怖くて! それに、振られたとしたら気まずくてもう廊下とかですれ違うことも出来ないじゃないですかっ」
「では……どうします? 卒業式の日にでも告白して、運良くOKしてもらえたとしても、すぐに地元を離れて遠距離になってしまう、そういうケースは多々あります。それならば今のうちにダメモトででも言っておいた方が得でしょ」
「ダメモトとかじゃなくて! なんでそんな怖いこと言うんですかーうわーん」
「いいですか、バレンタインは、思いが成就する日。男の子もその日は特別に意識するんです。その日は告白成功率が69%だと統計が出ています」
「けっこう低いじゃないですか!」
「いいですか、その日は、その日だけは、恋がたとえ実らなかったとしても何ひとつ恥じることなんてないんです。社会的に認められてるんですよ。だってその日は『好きな人に声を大にして好きだと伝えていい日』なのですから。その権利は女の子だけしか持っていません」
「占い師さん……わたし、ちょっと元気でてきたわ! やってみる!」
「ええ、がんばって」
「ありがとう!」
「……ところで、今日は何の相談ですか?」
「え、だからバレンタインの……」
「ああ、そう。そうだったわね。ごめんなさい……チッ、くだらねぇ」
「何か?」
「いえ。お代は……そうね、あなたは可愛いから2000円におまけしておくわ」
「ありがとうございました!」
「じゃあ、頑張ってね」
「はい!」

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