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2003/12/31 (Wed) ending

 結局、何を話したのかよく憶えていないまま、電車の時間が来てしまった。浮かれ気分で運転してきたけれど、駅に近づくにつれて会話は減っていった。僕もきみも、駅に着くことが別れになることだと知っていたから、本当はもっと沢山話したかったけれど……どんな言葉がこの場面や雰囲気に相応しいかが分からなかったから、結局ほとんど黙ったままの、約20分のドライブだった。
 切符は既に右の内ポケットの中だ。改札にはなぜか人があまりいなくて、並んでいる自動改札機が閑散としていた。まるで僕らの別れを急かすように、けれど静かに、そいつらは僕が切符を投入するのを待っていた。
 大きく溜息を吐いて、きみの手を離した。そのまま内ポケットから切符を取り出し、お別れのキスも抱擁もしないままに改札を抜けた。
 自動改札機越しの僕ら。振り返るのが怖かったのは、今きみの顔を見ると、情けないことに涙を流してしまいそうだったからだ。電車はきっと、もう来ている。目の前の階段を下りたホームで、あと1分後の出発を待っていることだろう。
『ほら、今しかないよ。最後の言葉を切り出すんだ』
 心の中で、誰かが呟く。僕を急かす。きみと一緒にいられた僅かな時間に感謝し、そして「またね」と言い放てと僕の背を押す。言葉はもう、喉元にまでさしかかっている。
 意を決し、振り返る。きみの目を見て、ばいばいまたねと言うんだ。

 きみは、首をかしげて、髪をかきあげ、そして、微笑んだ。

 僕は何も言えなくなった。次にきみに会えるのはいつになる? 来週? 再来週? もしかすると来月かもしれないし、半年後になるかもしれない。いや、明日になったら突然宇宙人が攻めてきて、もう一生会えなくなるかもしれない。あるいは富士山が噴火したり、巨大地震が起こったり、車に轢かれたりするかもしれない。今を境にもう二度ときみに会えなくなるかもしれないっていうのに、どうして、きみは、そんな顔を作れるんだ。

 ──でもその笑顔は、どんな言葉よりも強くて。

 ありがとうよりも、またねよりも、ばいばいよりも、もしかすると愛してるよりも、確実な答えを僕の胸に去来させた。だから僕も、精一杯の作り笑顔で、きみの微笑みに答えた。
 20秒後に出発する電車の中からでもきみにはメールも電話もできる。けれど、今の思いは、次に会ったときに直接伝えよう。

 だからさ、次に会えるときまで、元気で。

 僕が一瞬で想像したネガティブな気持ちを、震える思いを、焦がれる胸の内を、そんな風にしか物事を考えられない弱い僕といっしょに、弱い僕の言葉で、届けるから。次に会ったときも多分、きみは変わらないだろう? だったらその笑顔で僕の弱音なんて笑い飛ばしてよ。
 僕もそのときまでに一つくらい、きみを笑わせられる御話(おはなし)を、用意しとくから。

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