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2004/04/18 (Sun) 救世主

「ねえ、ヒーローってほんとにいるのかな」
 子供の頃、ある女の子が言った。彼女は僕と同じ年だった。同じ施設にいて、同じ御飯を食べて、同じテレビを見て育った。その子は僕らが中学を卒業するちょっと前に、どこかへ引き取られて施設を出て行った。それからのことは、十年間なにも知らなかった。知らない方がいいのかもしれない。そういえば、僕を含めて施設で育ったやつらはみんな、連絡を取り合おうとしないのだ。年に1回か2回施設に帰って子供たちと遊んだりおばちゃんと話をしたりする。そのとき、昔の知り合いたちに会うこともあるが、その場で話をするだけで番号の交換はしないのが僕らの普通だった。
 おかしなことに、僕はあの子の名前も忘れてしまっていた。
 前に帰ったとき、おばちゃんからあの子が亡くなったことを聞かされた。事故だったらしい。僕はあまり悲しいとは思わなかった。そういう人生もあるんだろう、くらいのものだった。

 ――ねえ、ヒーローはさ、いないって知ったよ。
 彼女のお墓は施設の裏の共同墓地にあった。結婚はしていなかったらしい。線香を上げて手を合わせ、彼女にそう呟いた僕は、ふいに涙を流してしまった。大人になって施設を出て、社会へ出た。そうして一人で生きていくことが分かり始めてきた最近、ヒーローはいないということに僕は気付いたのだ。
 だけど、まだ、諦めきれない。
 この刹那さはなんだろう? 彼女がいなくなったからか? 恋をしていたわけでもないのに。

「出てこいよ、ヒーロー。出てきて、僕らを救えよ」
 彼女の墓に背を向けて呟いた。僕はこれから、施設で残虐な行為に走るだろう。罪を犯すだろう。子供を殺すかもしれないし、友人を傷つけるかもしれない。おばちゃんの心も、施設の外観も、全てをボロボロにぶっ壊すだろう。
 なあ、本当にヒーローがいるんなら、僕を止めろよ。そうして可哀想な子供たちを守るんだ。誰も傷つかないように、誰も涙を流さないですむように、僕を止めるんだ!

 警察が正義の味方ではないことを知っている僕は俺は、だけどだからヒーローを求める。


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