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2004/05/07 (Fri) 万年青

 駅裏にあるくたびれた花屋さんには、ほとんど誰も足を運ばない。
 駅ビルにある大きなフラワーショップは今日もにぎやいでいるというのに。僕は暑い中、アイスコーヒーをちるちると吸いながらふらふら歩いていた。汗を拭うのは面倒だからそのままだ。僕が肥満中年だったら汗を拭っていても垂れ流していても「ウザーイ」「クサーイ」「マジ死んで」と言われているところだろうが、僕はカッコイイので垂れる汗も輝くのだ。まぁ、帰って背中とか腰の辺りを見ると汗疹が出来てるんだけれど。
 で、くたびれた花屋さんだ。僕は実はそこの数少ない常連で、彼女の部屋へ遊びに行く時はいつも花を一本買っていくのだ。
 暑い店先で、店主のおばちゃんは周りを気にしながら水を撒いていた。今日も暑いですねとぺこり、頭を下げられて僕もおじぎで返す。
「何かいい花ありますかね」
 いつものように聞いてみた。僕は花についてあまり知らないから、旬のオススメを選んでもらうのだ。おばちゃんはそうやねえ、と関西弁が入った口調で何か言いながら店先に出ている花を見回す。数少ない客の僕は、おばちゃんの数少ない話し相手というわけだ。一本買ってもいつも一本サービスしてくれる。僕は彼女の部屋へ一本の花を持って行くが、もう一本は花屋と駅を挟んで向こう側にあるくたびれた駄菓子屋へ持っていくのだ。そこのお爺さんも僕を数少ない話し相手だと言ってくれている。
「これなんかどうやろうね」
 そう言っておばちゃんはひとつの花を指した。小さいとうもろこしみたいな形の白い花だった。なんかちょっとキモいけど。
「それって何て言う花です?」
「オモトって云うのんよ」
「おもと?」
「そう。漢字じゃ万年青って云うねんで。ほら、パソコンやら携帯で変換してみ? オモトで出るから」
「おもとですか。青くなるんですか? その花」
 おばちゃんはハハハと笑った。
「この花な、七月ごろに緑色の実が付いて、冬になったら赤く染まるねんで。青くはならへん」
「赤くなるのに万年青ですか」
「そうや。どう?」
「いいですね。それ、もらいます」
 その万年青を一本買って、店を出た。赤を表す青、そういうのも悪くない。レッド・アンド・ブルー。僕は古い歌を口ずさみながら駅へ向かった。


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