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2004/09/01 (Wed) 蒸発現象

 僕の前を行く彼女も、僕の後ろを歩く彼も、僕には眩しすぎる。まだ旅は続いている。僕ら3人の旅。終わりのない旅。へとへとに疲れた僕は、いつからか僕の足元しか見ていなかった。彼の表情も彼女の行く先も知らず、ただうつむいて歩いていた。
 ミス・トゥモロー。ねえ、ちょっと歩くペース早過ぎない? そんなことを言ったらビンタが飛んでくるのは当然なので僕は何も言わない。
 ミスター・イエスタデイ。弟のはずなのにどうしておまえはそんなに僕よりでかく見えるんだ? …そう思うのは当然で、実際に弟の方が大きいし顔形も僕よりずっと素晴らしい。
 僕だけが、この3人の中で劣っているのだ。

 希望に包まれた姉さんと、栄光を背負っている弟。ねえ、あんたら僕と絶対血が繋がってないでしょ? 旅の途中、休んでいる時にそうぶっちゃけたら二人にビンタをもらった。僕は泣いた。繋がっているわけがないのだ。こんなに優秀なふたりと。僕だけが、きっと、橋の下かどこかに捨てられていた孤児なのだ。
「あんたはあたしらそのものなのよ」
 姉さんは言った。
「僕はいつもアニキの背中を見てるんだぜ。しょぼいこと言うなよ。こっちまでヘコんじまう」
 弟は笑う。こいつはよく笑う。
「なあ、知ってるかい」
 僕は恐る恐る会話に参加する。下手なことを言うとまた泣かされるのが怖い。
「夜の道で、対向車と自分の運転する車の光がクロスすると、その真ん中にあるものが消えて見えるんだよ。だから交差点内でも事故が起こるんだ。見えなかったはずなのに、そこに人がいてね」
「蒸発現象でしょ? 知ってるわよ」
「それがどうしたんだい? アニキ」
「出来のいいきみらにはわかんないかもしれないんだけど」僕は少し戸惑う。「僕は今、ちょうどそんな感じなんだ。輝かしいきみらに挟まれて歩いてると、遠くに居る人には僕の姿が見えないんじゃないかなあって」
「…そんなこと」姉さんが笑う。「あたしたちも思うことがあるの。あんたのこと。羨ましいってね」
「僕が? 僕の何が」
「アニキにだけ、影があるんだ。両方から照らされて、アニキの影はいつも大きい。それに、あっちにもこっちにも向かってるんだ。影は1つじゃない。ちょうど体育館にできた人影みたいにね」
「…それが何だってんだ? 何が羨ましいのさ」
「わかんないの? あんたの影が向いてる方向が、あたしが行く方向なの。それは360度続くわ」
「それに、アニキの背を見て僕はついてく。だから、僕らはアニキがいないと進めないんだよ。一歩もね」
「…どういうことだ? 俺はてっきり姉さんが進んだ方に俺たちが着いて行っているのかと…」

「トゥモローもイエスタデイも、全部おまえが向く方向にしか進めない。全てを決めるのは、影しか見えないお前なんだよ」
 遠くの方で、また誰かが言った。僕はあいつを目指して旅を続けるのだろうか。

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