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2004/10/19 (Tue) 死者夜這い

 九州ローカルなおまじないの1つに、「死者夜這い」というのがある。
 おまじないマニアなわたしは、先日、やっとその方法を手に入れた。九州の神社にだけ伝わる秘伝中の秘伝で、その派生形は各地に伝わっている。岐阜でもそれは見かけられたし、北海道にも似たようなのがあった。
 死者の顔をまたぎ、呪術の言を放つ。
 やり方はそれだけだが、効果はまったく正反対の2つを持つ。正しく行えれば死者は蘇るけれど、間違ってしまえば死者はゾンビと化し、術者も呪われてしまう。そもそも人を行きかえらせることなど出来るはずもないのに、どうして昔の人はそんなことを思いついたのだろう。考えられる要因は2つだ。ひとつは間違った方法をわざと実行させて術者に呪いをかけるため、もうひとつは希望的観測だ。切なすぎ、悲しすぎる死別なら、もしかして生き返るかも、と願う人が術にもうひとつの意味を込めたのかもしれない。結果として術者が呪われて近いうちに死んでしまったとしても、死後の世界で再会できるのなら本望なのかもしれないし。
 さて、この方法、九州ローカルなはずなのに伝承は古くヨーロッパ、中国、トルコ、アメリカ、そして日本各地にも見られるのだ。ヨーロッパでは死者が吸血鬼になるという伝承、中国ではキョンシーになるという伝承、トルコやアメリカでは不死のゾンビになるというし、日本では幽霊あるいは鬼になるということだった。それらを年代順に並べてみると、どうやら日本で起こったおまじないだったことがわかる。文献によれば平安時代から始まったこの術法は元の時代に中国に伝わり、それからトルコ、ヨーロッパへと中世に流れ、最終的にアメリカで19世紀にゾンビというモンスターを生み出すに至った。逆に云うと、吸血鬼伝説やゾンビの恐怖という、中世におけるモンスターホラーの根源がこの九州ローカルの「死者夜這い」なのだ。
 この方法がどうしてこんなにも世界中に広まっていったのか、考えられる理由は2つだ。ひとつには先述の通り、術者を呪いにかけたいがためのこと。もうひとつはまったく逆で、戦争の多かった時期に親しい人を亡くしたことで藁にもすがる思いで生き返って欲しいと念じたことだ。
 …それらの行動の結果がどうなったかは、今さらいうまでもない。
 術の全ては失敗したのだ。だから世界中でモンスターが溢れた。血をすすり肉を喰らうモンスターたち。それらは全て、悲しい理由でなくなった肉親たちだったに違いない。

 どうしてわたしがそんな危険な術を手に入れたかというと、大好きな妹が死んでしまったからである。それも、私のすぐそばで。くそったれな車に轢かれて。
「ねえ、生き返って」
 深夜2時、わたしはノートに写した術の言葉を読み上げながら妹の身体をまたいだ。顔はない。事故の際にくしゃくしゃになってしまっていた。こんな身体のまま生き返られても困るけど、でも、わたしにはそれしか方法がなかった。中世のひとたちの悲しい気持ちは、痛いほどわかった。
 わたしの血や肉や、顔も命もあげるから、ねえ、どうか、生き返って。

 こぼれた涙は、彼女の身体にぴちりと触れた。彼女の手がびくんと動く。めきめきと筋張った腕が、なんだか青白く染まりながら動き始める。

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