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2004/10/17 (Sun) 鰯

 今日の夕飯のおかずは、いわし。マイワシだか何だか分からないけれどスーパーでとことん安かったので妻が買い込んできたのだと言う。今食卓に並んでいる以上に冷凍庫に入っているらしい。この先、何日かはいわしを食べさせられることになりそうだ。魚は嫌いではないが骨をより分けなければいけないのが面倒で、私はどうも魚を率先して食べたいとは思わない。いわしは旬なのだろうか、と箸でちょいとつまんでその白身をライトに透かしてみたりなどしてみたが、私にとってはどれもこれも同じ魚でしかないのだ。
 確か、「さかなへんによわい」がいわしだったはず。鰯。大量に上げられて一匹数十円で叩き売りされ、私のような骨を面倒がる人間に食われるだけの一生…それはどんなものだろう。かといって一生を海の中で過ごせれば幸せだろうか。
「何考えてんの?」
 ぶすっとした顔の妻が私を睨む。子供たちはすでに食事を終えており、部屋でゲームに熱中している。骨も皮もばらばらになって皿の上に散らかしてある。食べたのはほんの少しだ。もっと身をちゃんと食べてやらないとこのいわしに失礼じゃないか、などとセンチで馬鹿なことを思った。
「いや、いわしのことを」
「いわしのこと?」
「ああ。こうして無茶苦茶に食われてこいつらはどう思ったかなってさ」
「…どうも思わないわ」
 妻は少し考えて、言った。
「知ってる? いわしって。群れになって泳いでるのよ」
「聞いたことはあるな」
「100万匹の群れよ。それが網にかかって漁師に上げられるの。それを可哀想だなんて思わない方がいいわ」
「…どうしてだ」
「100万匹いても、1匹さえ自分の考えを持ってないのよ。身体が海流に合わせて動くだけ。それが100万匹の群れになってるだけ。波が変われば身体の向きも変わるの。みんなが右を向いたから右を向き、左を向いたから左を向くの。それだけ。魚辺に何が弱いって、いわしほど頭の弱い魚はいないわ」
「…そうなのか」
「ってことを、高校生のとき、ものの本で読んだの。それから私は自分で考えるようにって思って生きてきたの。あなたはどう? 自分で考えられてる?」
「ははっ。自分で…か。どうかな」
 鰯の身をほぐしながら、私は考えた。会社勤めをするようになってから、仕事以外で自分の頭を使うことがあっただろうか。人の言い分に流されて考えを変えてきたりはしなかっただろうか。あるいは、沢山の人と同じ方向にただ歩いてきただけではなかっただろうか。
「鰯の人生は、俺に通じるものがあるな」
 ふん、と笑って妻は皿洗いを始めた。二階にいる子供たちのことを少し思う。いわしの稚魚、しらす。彼らがしらすやめざしのような人生を送らないようにさせるためには、私がまず頑張らなければいけない。
 ここにあるこの青魚はせめて完食してやろう。変な決意をやどした私だった。
 秋がふけていく。

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