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2005/04/26 (Tue) 大人になってしまった僕らの歌

 月を見ていた。
 冷たさが心地よいベンチは、最近の僕のお気に入りだった。深夜0時ちょっと前になると人がいなくなり、電線をちょうど隠すように葉をつけた桜の木が、真上の景色をどこか違う場所からの景色に変えてくれる。物音はない。足音もない。虫や鳥の声もないのが都会を感じさせてしまうけれど、ほぼ完全に無音の空間がそこにはあった。首をもたげ、手の力も抜く。ひんやり。今、僕はこの無音の一部になっている…そう思うことが楽しみというか、じんわりと広がる何かだった。たぶんそれは幸せに近い感覚だった。けれどその幸せを認めてしまうと、日向ぼっこで幸せになる老人と同じになってしまいそうで、ちょっとだけ怖かった。僕はまだ若い、そう思いたかったのだろう。
 けれど、週末になって、隣のベンチに人がやってきた。
 大学生くらいのカップルだった。付き合い始めなのだろう、まだ相手との距離をよくわかっていないぎこちない感じだった。何を話しているかは聞こえなかった。ただ、月を見上げて何か言っていた。
 ぼそぼそ。ぼそぼそ。それは、たぶん「月が欠けていくのが切ない」というような内容だったと思う。それを聞いた時、僕は僕が大人になってしまっていたことを実感してしまった。
 確かに過去、僕にとっても月は欠けていくもので、それは切なさややるせなさの象徴だった。
 けれど今は違う。僕にとって月は満ちていくものになっていた。いつからか…わからないけれど。
 満月に向かって満ちていき、新月に向かってまた満ちていく。
 そう思って心に安らぎを感じてしまうことは、もしかしたら僕が”落ち着いた”大人になってしまっていたからではないだろうか。人とどう接していけば無難に生きられるかを知ってしまった、かけひきや本音のない世界の住人に。
 そう思ってしまってからは、胸にいつも流れていた歌が聞こえなくなってしまった。
 無音の夜の公園。けれど、切なさは感じなかった。

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