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2005/06/08 (Wed) あいこちゃん

 席替えをしてもなぜか毎回一番後ろの席になってしまう女子がいる。
 昼メシの時間もいつも一人でパンをもそもそ食べるだけですぐに済ませてしまって、休み時間もずっと本ばっかり読んでいる。本の虫がなんたら、っていう英語の構文を授業で覚えさせられたが、彼女はまさにそれだった。というより、本が恋人とか友達とか、って感じよりもむしろ本が彼女の一部なんじゃないか、ってくらい読んでいた。しかも2、3日で違う本に変わっている。この前ちらりと見えた表紙は時代小説だった。
 へー、そういうの読むんだ。けっこうカタい本が好きなんだ? って話しかけたことがあったが、「別に」の一言で斬りおとされてそのまんまだ。それ以外にも何度か話しかけたことがあったが彼女の返事はいつも一言で、しかも素っ気なかった。
 ある日、たまたま帰り道で出会った。放課後も教室で読んでいるのだろう、部活帰りの僕と同じ時間だった。いつもこのくらいの時間なのかと訊ねると「そうよ」の一言だけが返ってきた。
「きみはいつも一人でいるよね」
 軽くジャブから、と思って話を繋げた。彼女は何も言わずにちらりと僕を見て、すぐまた視線を前に戻した。さすがに歩きながらは本を読まないらしい。
「ケイタイ持ってないの?」
「ないわ」
「どうして。面白いし便利だよ」
「…あなた、そのお金自分で払ってるの?」
「いや親が払ってくれてるよ。毎月1万までね。それ越えたら自分で出すけど」
「そう」
 何かまずいことを言っただろうか。なんだか歩くスピードが上がった。逃げようとしているのだろうか?
「ひとりが好きなのかな。まあ俺もつるむのはあんまり好きじゃないんだけど」
「そう」
「そういやぁさ、クラスの鈴木ってさ、ちょっと変なんだよー。なあ知ってる?」
「知る知らない以前に興味ないわ」
「もしかして俺のこと避けてる?」思い切って聞いてみた。
「別に」
「なんでそんなに素っ気ないの? 俺の話つまんないかな。きみだって一人でいてもつまんないだろう? 本ばっかりでさあ。そんなんじゃ楽しくないぜ。恋愛とかさあ。したいと思わないのか?」
 彼女はちらりとも僕の方を見ない。僕は続ける。「一人でいて何が楽しいんだ?」
「一人ではないわ」
「え?」妖精が見えるとでも言うつもりか?
「あなたは一人じゃないの? いつどこに居てもあなたは誰かを感じているの?」
「いや…」彼女もいないし。「そうではないけど」
「じゃああなたも一人でしょう?」
「でも俺は友達もいっぱいいるし」
「いるから何? 何か意味あるの? いつまでもその友達は続くの?」
「いや…わかんねぇけど楽しいじゃん。友達といたらさ」
「あなたも一人。わたしも一人。今こうして信号待ちしてる全員が一人。みんな一人なの。一人で生まれて一人で死んでいくの。誰かと本当に分かり合うなんて不可能よ。誰もが違う人だから」
「そんなことあるかよ。恋人が出来れば分かり合えるだろうが」
「それはどうかしら」
「たぶんそうだと思うよ。恋愛は楽しいし。その人のこと考えるだけで楽しくなったりすんだよ」
 …ちょうど今、俺が楽しいのと同じように、だ。
「そう」
 彼女はやっぱり冷たい。俺には気がないということか…
「みんな一人なの」
 交差点で、彼女は右に曲がった。俺は真っ直ぐ進む。
「でも」無言で別れた俺に、足を止めた彼女が振り向いて言った。「だからわたしもあなたも独りではないわ」その一言だけを残し、すたすたと歩いて行ってしまった。
 …インテリなのかな。
 彼女の言わんとしていることが分からない。俺も少し本でも読んでから出直そうかな、と思った。

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