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2005/07/14 (Thu) 幼心

 まだ世界が「幼稚園」と「身長100センチ以下」だった頃、幼稚園の帰り道に母と手を繋いでいつもの道を歩いていた。同じ道のはずなのに、いつも同じ曲がり角を曲がるとデジャブが起きた。「この曲がり角に来るのはすごく懐かしい」「すごく久しぶりだ」というようなデジャブだった。けれどそれはいつものことだし、道もいつも朝夕通るから、なぜ懐かしいのか分からなかった。
 家の近くまで来た頃、夕飯の話なんかをしていたと思う。家の方からこちらへフラフラした男が歩いてきた。母は男を気にしていなかったが、僕は目を逸らせなかった。特に不思議な様子も不自然な感じもなかったはずなのに、なぜかその男のことが気になってしょうがなかった。
 僕らの前に来た男は、僕をちらりと見て微妙な顔(笑ったような悩んだような顔だった)をして、母に言った。「水をもらえませんか」と。声は覚えていないが、妙に僕の心に通る声だった。男がひどく苦しんでいることが分かった。
 すぐそこに家がある。コンビニも自販機も近くにないので、帰ってコップ一杯の水を持ってくるくらい、1分あればできることだった。けれど母はついっと断り、僕の手を引いて早足で歩いた。僕は途方に暮れてこっちを見ている男をずっと見ていた。
「ねえ、お水ほしいって言ってるよ」
「いいのよ、あげなくても」
「あげようよ」
「いいの、水くらいどこにでもあるでしょ」
「困ってる人を助けなさいってママ言ってるじゃない」
「それとこれとは違うの。ああいう怪しい人には関わっちゃダメなの。家に上げて、何かされたらどうするの」
「でもー…」
 男はずっと見ていた。
 僕は母に言いたいことがあった。なぜそんなことを思ったのだろう。今でも分からない。
 でももしかすると、と思うと怖くなる。僕はそのとき、ペットボトル1本でも持っていられるだろうか。
「ねえママ、あれはしょうらいのぼくだよ」
 どうしてあんなことを思ったのだろう。
 僕をじっと見つめていたあの男の視線が、今もときどき僕を睨む。
 ――鏡の中で。

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