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2005/07/28 (Thu) チョイス

「君は死ぬ。間違いなくね」
 突如現れた死神は僕に言い切った。あと48時間だとか言った。事故や災害に巻き込まれて死ぬ人は死神が絡んでいるという。じゃあ爆撃を受けて死んだ何千人はみんな死神に宣告されてたのか? そんなアホな。じゃあ僕はなぜ選ばれた? 僕になんか構うようじゃ死神も暇だな。
「死ぬの僕?」
「死にます」
「なんで」
「決まったから」
「決まった?」
「そう。こっちのルールで」
 ひどい。ひどすぎる。でも死神と名乗ったそいつの風貌は明らかにチャラけてる”アホなおっさん”のそれだったので、僕はもう笑う気も起きない。
「おまえみたいに独り者だとな、俺らみたいなのが突然来ても相手してくれるのよ。なぁ?」
 死神はぽんと肩を叩いて同情してくれた。…馬鹿にされてんのか?
「ただ」死神は真顔で続ける。「死に場所は選べる」
「えー? 好きなとこ行けるのか?」
「そうではない」
「あっそうか。最後に1つ望みを叶えてくれるわけか! 48時間ありゃ何でもできるよな! よっしゃ、いい女を――」
「そうじゃない。おまえが望む死に方を選べるということだ」
「望む死に方」
「そう」
「なんだそれ?」
「自らに問うのだ。普通の人間でも47時間半はかかる問いかけだ」
「嫌だなぁそんなの」こんなハワイアンみたいなおっさんに難しい問題出されて悩みながら死ぬのは嫌すぎる。
「おまえはどう死んでいきたい?」
「どう…って。いや、できるなら苦しまずに」事故でも即死がいいな。しかも女の子かばったりなんかして。
「そういう意味でもないのだ。つまり、おまえは男として死にたいのか学生として死にたいのか研究者として死にたいのか人間として死にたいのか動物として死にたいのか日本人として死にたいのか。おまえが属する最も大切な”タグ”はどれだ?」
「僕の…在り方?」
「そうだ。よく考えろ」

 僕は、今、生きている。人間として、この現代日本で一人暮らしする大学院生として。ちょっとずつ面白くなってきた研究と、書きあがった論文がある。提出しなきゃいけない。そう。バイトは大学で実験の助手とか。彼女は今はいない。別れて数年経つけど出会いがない。
 僕は、今、生きている。悩みながら。

「研究と私とどっちが大事なのよ!」
 当時の彼女はそう言った。笑いながら言ってた。あれは冗談だったけど、今の僕には笑えない。今もしも彼女が出来たとして、やっと僕が目覚めて認められ始めている研究を疎かにできるだろうか? 否。無理だ。僕は研究が大事だ。でも彼女ができるなら大事にしたい。でも、ときおり山に登って夜空を眺めることが至上の喜びでもある。それは”人間”の僕が欲しているものだ。僕はそういう感覚も大事にしたい。

「僕は、誰だ?」
 声に出してみる。ふと見ると部屋には誰もいない。あの死神はなんだったろう。
 あと…47時間ほど。僕は死ぬのか? 事故か災害か災厄で。
 そのとき僕は、短かった一生を満足できるだろうか? 僕は”誰”で、”どう”やって死んでいくだろう。
 僕が一番大事なのは、僕のこころの何なんだろう。こういうこと考えんのって、もしかしてダサいのかな。
「僕は、誰だ?」
 もう一度、口に出して確かめてみる。僕は。誰でありたいんだ。

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