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2005/10/20 (Thu) 夜回り探偵

「先生、誰か来とるよ」
「誰だ。日本人か」
「日本人や」
「男か」
「女の子やわ」
「どんなだ」
「高校生くらい? かな」
「見た目は」
「あほな感じやわ」
「あほか」
「あほや」
 ブラインド越しにちらり、とそのあほ女の様子を眺め見て、やれやれとオートロックを外した。
 ここに来る奴なんてみんなあほなのだ。俺を含めて。

「あたし、死にたいんです」
「そうか」俺もだ、とは言わない。
「探偵の先生はお金で何でもしてくれると聞きました」
「まぁな」まるでブラックジャックだ。
「お金は用意してきました」
「いくらだ」
「2000円」
「ホントにあほだな」どうしようもない。
「これであたしを殺してください」
「…その言葉は――」
「はい?」
「きみに何をしてもいい、という意味かな」
「え?」
「例えば、性欲の捌け口として無茶苦茶な行為を強要した挙句、ヤバいクラブに持っていって乱れた男どもに一晩二晩相手を任せて、水も食料も与えず乱暴してから爪をはぎ耳をそぎ目を潰し骨を一本ずつ折ってじわじわ殺していってもいいという意味か、と聞いているんだ」
「そんなっ……」
 少女の顔色が一瞬で青くなる。血の気が引く音、というのはとてもよい。俺には聞こえるのだ。
「嘘だ。冗談だよ。わかった。2000円で殺人は引き受けないが、これを売ってやろう」
 俺はポケットから小さいカプセルを取り出す。プチリとひとつラップから出し、テーブルに置いた。
「これを飲んだらあと30分で死ぬ」
「えー」
「飲んだ後で誰かに何か話されたら困るからな。ちなみにこの部屋は圏外になってるからな。飲むなら今飲め。ここでだ。そして俺は何もしないで30分間ここでキミを見ている」
「どんな風に死ぬの?」
「痛みも苦しみもない。外側が溶けるのに30分かかるだけだ。溶けた後は急激に眠くなり、意識を失う。眠っている間にお陀仏だ。安楽な方法だよ」
「買います」
「即決だな」
「はい!」
「じゃあ飲め」
 少女は、何も言わずに飲み込んだ。



少し、部屋は静寂に包まれる。俺は知らん顔で本を読むだけ。少女は高級ソファにもたれるでもなく、ただただ自分の手と膝を見つめていた。




 29分後。
「あと1分もない。そろそろだ。怖いか?」
「……」
「黙ったまま死ぬのもいいだろう」
「……」
「そういえば、俺はキミの名前も死にたくなる原因も聞いてなかったな」
「……」
「まあ、死んでしまえば関係ないか。すぐに忘れる。キミが今日ここに来たことも、今まで生きていたことも」
「…忘れる…の?」
「ああ。1年、いや数ヶ月でキミが生きた証なんてものは全て消え去るだろう」
「……」
「死ぬ前に最後に一言、聞いてやろう。今の気持ちは?」
「…あたし」
 少女は、言った。
「あたし、死にたくない…」
 直後、少女は膝から崩れ落ちた。すやすやと寝息を立てる。涙と鼻水が垂れている。やれやれ。

「先生、この子どうすんのさね」
「面倒だな」
「イタズラしちゃうのけ?」
「ふん。まさか。そんなことをしたら俺が死にたくなるだろうが」
「じゃあいつものところ?」
「ああ、手伝えよ」
「しょうがない先生やねぇ」

 俺は一人で少女を抱え、知り合いがやっているバーに運んだ。「重いね、先生」頭の中で変な方言を使う奴が五月蠅い。まぁ、俺には心地よい。
「その子が目を覚ましたら適当に言って家に帰らせてやってくれ」
「あいよ。いつも大変だねぇ。探偵はよう。家出娘やら何やらの世話しなきゃいかんしなぁ」
 深い眠りに落ちることができる安全な睡眠薬。俺を眠らせる唯一の薬。常人なら2日といったところか。
 目を覚ましたとき、あの子はおそらく、生きる理由を見つけているはずだ。

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