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2005/10/19 (Wed) 遭難者

 遭難したときは、下手に動かずに救助が来るのを待った方がいい。
 待った方がいいというより、待たなければいけない。動き回れば体力を消耗し、食料と水を減らし、現在地を見失い、救助が困難になる。いいことはないのだ。
 そう。それは知っていた。定石だ。

 けれど、その定石は、登山をしますよと誰かに言っておいた場合にのみ有効な方法なのだ。
 山に誰もいないと全員が思っていれば、山には誰もいないことになる。そんなときに救助をひたすら待つのは意味がない。それなら、ダメもとで歩き出すしかない。
 だとすれば、山頂に向かうのがベターだ。下手に降りていけば道を失うことがあるかもしれない。遠回りになっても一旦山頂に上り、全景を確認したうえでルートを決めて降りていくのが定石だ。

 ただし、その定石は、”登山”の場合にのみ有効な方法だ。


 ――僕は今、まさに遭難していた。
 ここは山ではない。谷でもない。丘でも海でもない。街でもないし、そもそも誰もいない。
 迷宮だ。
 自分で望んで山に登る登山者とは違い、僕は気付くとこの迷宮の中にいた。どこから始まりどこで終わるのかも分からない、永遠に続くような暗い暗い迷宮。「そこに山があるから」なんつって悠長に構えてる登山者はみんな死んでしまえばいいと思った。「そこに何もなくても」僕は迷宮に迷い込んでしまう。
 自分を呪った。我武者羅に歩いた。そして、僕は遭難した。


 山頂などない。出口など見当たらない。見えるのはひたすら細く入り組んだ通路だけ。ときどき見えるドアには凶悪な怪物が待っていて、僕をおどかしたり怖がらせたり消耗させたりする。けれど、決して殺しはしない。その恐怖は”死”以上の災厄だ。
 続いているのはひたすらに地下への道。じゃあ上から来たんだっけ、と思うが、歩いているうちに上か下かもわからなくなってくる。

 誰か助けて、と叫んでじっと待っていても誰も来ない。それは分かっていた。
 僕が迷っているここは、まさに僕が作り出した迷宮なのだ。入り口も出口もない、僕のこころの迷宮。救ってくれる誰かなど、いない。ここに迷い込んだが最後、僕は僕を狂わせ、傷つけ、殺すのだろう。
 助けなど来ない。
 誰も救ってはくれない。そもそも、僕は誰かに救いを求めてはいけない。ような気がする。

 登山者が山頂を目指すように、僕は迷宮の深遠を目指す。最深部に辿り着ければ、もしかしたら出られるかもしれないのだ。
 血と涙を垂らしながら、息を切らしながら、それでも歩くしかない。誰にも届かない「タスケテ」も洩らしながら。

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