--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2006/01/11 (Wed) 超新星

気付いた時には、火は消えていた。
擦り切れて血が滲む手が掴んでいたのは、鈍く燻っているだけのたいまつで、歩いていた場所は明るくて、温かくて、火は必要なかった。だから、消えていたことにさえ気付かないでいた。

洞窟に入って始めて気付く。
そこは暗くて寒くて、僕は一人で。

それでも闇に目が慣れてきて、片手を壁につけながら進んだ。目指す先をはるか遠くに見据える。いや、本当は見えていない。”それ”があると聞かされて、思い込まされて、”そこ”に辿り着くために歩いているのだ。
もうどれくらい歩いてきただろう。
わからない。
日記をつけていたノートはすでにページが埋まっていて、久しぶりに新調したノートは1ページも書かないでそのままだ。
そういえば、そのときもだった。
ノートを新しくして街を出て、ペンがないことに気付いたのだ。

僕はいつもそうだ。
失くしてから気付く。
分かっているはずなのに、体験しないと心が納得しない。だから、こうして歩く。先の見えない道を歩くのだ。
大人になっても、続けている。

僕は一人で、今も、歩いているんだよ。

思い出して、少し涙が溜まった。
もうちょっと僕が若かったら、こんなことでは涙は出ないはずだった。今まで僕が関わってきた沢山…とはいえないまでも、数え上げられない数の人の顔を、不意に思い出したのだ。
みんな今どこで何してるんだろう。
僕はどうして今も一人で歩いているんだろう。

それでもたぶん、誰かに会っても僕は、何も言えない。何かを言わなきゃって思ってテンパって、結局言葉は出てこない。
そして適当に挨拶をして、別れて一人で歩き出したころ、やっと言葉が出てくるんだろう。
もう何度も何度も繰り返した。
いつも遅いのだ。一人になってから、気付くのだ。

これは後悔だろうか?
だとすれば、人はどうして、後悔するような生き方を…歩き方を、選んでしまうんだろう。
ホントに欲しいことは分かっているのに。
それでも、歩く。
ただ歩く。
暗くて、怖くて、叫んでもどうしようもなくて、誰もいない場所で、でも、歩く。歩くしかないから。

気付くと、消えたはずのたいまつが、まだ燻っている。
鈍い。遅い。でも、燻っている。
僕は、火種を求めてまた戻るべきなんだろうか?
「今度こそ火は消さない」って心に誓って?

…最初の町へ?
じゃあこの旅の意味は何だ。



「何もない」



うっかり、声に出た。
そうだ。何もない。血を流していることに気付いて、火が消えていることに気付いて、誰もいないことに気付いて、そして、後悔して、足を止める。こんなことを続けて何になるって言うんだろう。

気付かなくても、わかった。今は夜だ。
洞窟の中だから夜とか朝とか関係ないんだけど、今はたぶん、夜だ。空には沢山の星があって、それを眺めたら少し穏やかな気持ちになれるんだろう。そんなことは分かっている。
でも、僕が見上げた瞬間の夜空は、
そんなものは、
無いのだ。
本当の星は全部消えていて、燃え尽きていて、僕が見ていたのは、星がかつて燃えていたというだけの光にすぎないのだ。
それはたぶん、僕もそうだ、と単純に結論付けたくなってしまう。
僕が生きた証は、僕がいなくなった後に誰かが付加するものなのだ。いい意味でも悪い意味でも。

「なあ」
燻っているたいまつに話しかけた。自分がいかれていることを知りながら、僕は震える声で話しかけた。
「お前も、消える前は一番強く燃えてたのか?」

スポンサーサイト

読みきり | trackback(0) | comment(0) |


<<存在 | TOP | 大きなのっぽの古ブロガー>>

comment











管理人のみ閲覧OK


trackback

trackback_url
http://sweetstorylatte.blog35.fc2.com/tb.php/311-4e00306e

| TOP |

プロフィール

Author:ryow

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。