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2001/09/12 (Wed) 片道切符

 部屋に帰ると、人のよさそうなオッサンが座っていた。
「よう。おかえり。しばらく世話になるぞ」
僕は表札を何度も確認し、部屋の中をチラチラと見て、そこが自分の部屋であることを確認してから、いきなりキレてみせた。
「てめぇ、人の部屋でくつろいでんじゃねーよ!さっさと帰れ!警察呼ばれるかブン殴られるか金置いて帰るかどれか選べ!ボケぇ!」
 オッサンはよいしょと立ち上がり、ヘッヘッへと笑って、こう言った。
「まあまあ。自己紹介しとくわ。俺、貧乏神な。ああ、俺のこと、お前にしか見えてないから。さぁさ、入ってくれ。俺はメシも風呂もいらないから、いつもどおり過ごしてくれ」
「…はぁ?」
あまりに拍子抜けしたオッサンの台詞に、僕は恐怖を感じた。オッサンに触るのはイヤだったが肩をちょっと叩く。幽霊…じゃない。ちゃんと実体がある。
「言っとくけどな。俺は低級霊じゃねぇから、ちゃんと体あるんだよ。こっちでしっかり修行して、立派な死神にならなきゃダメなんだ。俺ん家にゃ嫁さんとガキもいるしな。仕事して出世しなきゃ、このご時世…おまんま食い上げなんだよ」
 こうして、妙に俗っぽい貧乏神との同居が始まった。

 僕は貧乏神を勘違いしていたようだ。奴ら(沢山いるらしい)はだれかれ構わず人を不幸にしていくものだと思い込んでいたが、ターゲットになるのは、心の汚れた人間だけらしい。僕は普通レベルだそうで、ターゲットにはされなかった。オッサンは毎日、朝早く部屋を出て行っては夕方帰ってくる。朝はカラだった鞄が、夕方にはパンパンになっていた(次の朝にはまたカラに戻っていた)。僕はその中身を見ることはなかった。
 そして約2週間。ある朝、目が覚めると、オッサンはいつもの…競馬で負けたような…薄汚れた服装ではなくて、黒いスーツを着ていた。
「よう。おはよう。今まで世話になったな。今までの礼として、コイツをやろう。じゃあ、またいつか会おうな」
 僕が言葉を発する間を与えぬまま、オッサンは部屋を出て行った。そしてそれっきり、戻ってくることはなかった。オッサンが残していったのはチンケな紙切れ。そこにはこう書かれていた。

死神フリーパス券
名前:_____ 期限:2029/12/31

裏の説明書きを読んだ。名を書かれた人を心臓麻痺で殺すことが出来るのだそうだ。なんて危ないチケットだ。まさに死への片道切符。僕はこれを使う日が来るのだろうか。

 たった2週間の、しかも汚いオッサンとの同居生活だったけど、毎晩下らない話をしたり、互いの悩みを語ったり、酒を飲んだり、女の話をしたり、天国と地獄の話をしたり、そんな時間がやけに懐かしくて、早くいなくなってくれと思っていたはずなのに、僕は少し寂しくなった。
 昨夜のオッサンの言葉が、僕の中に残った。
「貧乏神が死神になってな、ちゃんと仕事してたら、今度は福の神になれるんだよ。そうなれたら、また来るから」

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