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2001/09/22 (Sat) 伝説の質屋

 いつもの駅裏の通りに、新たな店が出来た。黒っぽい色の看板に、これまた黒いペンキか何かで色々書いてあるけど、読めない。僕は例によって終電を逃し、公園で口をゆすいでから、興味本位でその店に入ってみた。この通りにある店はどれも不思議な商品を扱っている。以前行った「幸福屋」には今もときどき通っている。この通りの店は、夜になると営業を始め朝が来ると店を閉める。この新しい店も、そうだった。

「いらっしゃいませ…」
 予想通り、客は一人もいない。店の中はガランとしていて、というか何もなく、目の前に店員さん(普通のオッサン)がいるカウンターがあるだけだった。
「あの、この店は…何を扱ってるんですか?」
無礼な質問だったかもしれない。まあいい。僕は酔っ払いだ。
「ここは質屋でございます。ただし、扱うのは普通のモノではございません…」
「…っていうと?」
「心の質屋でございます」
「心?」
「そう。いいことも、悪いことも、あらゆる記憶を取り扱います。また、例外的にモノも扱いますが…、これは、体の一部を。健康な臓器から、ガン細胞、火傷の跡や、余分な脂肪までも」
 意味がわからなかった。
「記憶?じゃあ、僕の嫌な記憶を買い取ってくれたりするの?」
「ええ。どうぞ」
 店員はそう言うとヘッドホンみたいなのを取り出した。
「これをつけて、お売りになりたい記憶を思い浮かべてください…」
「じゃあ、ためしに」
 僕は何の疑いもなく、ヘッドホンをつけた。まぁ、ちょっとくらい騙されてもいいかな、ってなモンで、子供の頃のいじめられていたことを思い出した。当時のことがやけにリアルに浮かび、不覚にも涙が出た。

「…ありがとうございます」
「………。えっと、僕は何をしてたんでしたっけ?」
「過去の記憶を、お売りになられたのでございます」
店員は小さな瓶を取り出した。中に入っていたのは、透明な液体だった。それは油のようで、サラサラとしている割に粘性がありそうな、そして光に当たると変な色に反射して。
「…僕は何の記憶を?」
「子供の頃の…思い出したくない、過去ですね」
「そうですか」
僕がいじめられてたって?そんなこと…。嘘だろう?全然記憶にな…、って、これか。これが効果か。
「御代でございます」
店員はテーブルの下から2000円を取り出し、僕に渡した。この記憶が2000円か。

「さっき、体の一部とか言ってましたよね。普通、整形したら…、例えば火傷とか脂肪とかを取るのにお金払うじゃないですか。それを、買い取ってくれるって?すごいじゃないですか」
「ええ。必要とされるお客様もいらっしゃいますし」
「…火傷や脂肪を?」
「当店では、全ての商品をこの瓶に封入いたします。記憶も、火傷も。この瓶の中身を飲んだ人には、その記憶ないし火傷が、再現されるというわけです」
「それって得があるの?」
「ご利用法次第でございます」
「例えば、どんな利用法があるんですか?」
「……。都合のよい記憶だけを再現させれば、あるいは洗脳…といったようなことも可能ですし、女性の方でしたら、嫌いな方をガンにしたり火傷にしたり脂肪をつけさせたり、などと…。いわゆる、復讐…に使われる方が多いですね」
「そんな無茶な」
「まあ、多少、お値段は張りますが…」
「じゃ、じゃあ。例えば、僕の人生の記憶を全て売るとすれば、いくらくらいになるんですか?」
「そうですね…。1億5000万程度、でしょうか」
「それを買い戻すとしたら?」
「約4億5000万というところでしょうか」
「ガン細胞の値段は?」
「初期ならば100万程度。末期ならば1000万程度でしょうか」
「でも、でも、ですよ?ガンを取り除けるんなら、そっちの方がお金になるんじゃないですか?不治の病だって、取り除けるんでしょ?」
 店員は恐ろしいほどにニッコリと微笑んだ。
「…需要と供給でございます」

 店を出ると、夜明け前だった。肌寒い季節になってきたものだ。店の看板を見ると、よく質屋にあるような、丸の中に質、と書いてあった。来るときは気がつかなかったが、隣にもテナントを作っている途中だった。次は何の店が出来るんだろう。いつかここは、不思議通りとでも呼ばれるようになるんだろうか。
 まあいい。コンビニで食べるものでも買って、公園へ行って猫に餌をあげよう。

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