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2001/09/23 (Sun) シェリフアンドガール

「火打石を買ってください。火打石を」
 クリスマスの夜、赤いフードをかぶった少女は、街角で火打石の売り子をしていました。しかし例によって、降り積もる雪よりも冷たいこの街の人たちは、石など買ってくれません。
「こんなことならライターでも売ってりゃよかったわ。もう、こんな石なんていらないわ。どうせ川辺で拾ってきたものだし(それは火打石とは言いません)。もしかしてバレてるのかしら?」
 少女は鞄から石を2個だけ残して全て取り出し地面に積み、わざわざガソリンスタンドまで行って灯油とハイオクを買ってきて石にかけ、ライターで火をつけました。石自体は燃えませんが、炎は凄い勢いで踊り狂っていました。
「ああ、暖かいわ…。でも何か足りない気がする。何だろう?そういえば今夜は聖なる夜ね…。ただの炎じゃ聖夜を彩れないわ」
 少女は薬屋へ行き、マグネシウムの粉末を買ってきました。そしておもむろに炎の中に投げ入れます。炎は目に突き刺さるような凄い光を発しました。
「ああ、美しいわ。この火は芸術…。今年最後の芸術よ!この街の人の心より温かく、この街の人の心より美しく、そして…」
 少女がちょっとヤバげな表情で炎を眺めているところへ、街のシェリフがやってきました。
「おいお嬢ちゃん、何してるんだい」
少女は軽く振り向き、「焼き芋よ。ほっといてちょうだい」と言って、また炎を眺めていました。シェリフは何か言いかけましたが、少し咳払いをした後、無言で炎を眺めていました。
 やがて火も消え、残ったのは少し焦げた石だけでした。シェリフはおもむろにその石をヴィヤベースの中に放り込みました。
「…どっから持ってきたの?」
怪しんでいる少女の肩をポンと叩き、鍋を地面に置いて、シェリフはポケットからスプーンを取り出し、ヴィヤベースを食べ始めました。
「おお、こりゃ上手いぞ!今までにない温かさだ!いや、熱い!これは熱いぜ!ハフーハフー」
 試しに少女も食べてみました。火傷するような熱さが、魚介類のうまみをひきたてます。しかし、なぜか、こみ上げるものがありました。お腹が一杯になる以上に、胸が一杯になり、涙がこぼれました。

「うまかっただろ。お嬢ちゃん」
「ええ。ありがとう。商売あがったりだけど、いい思い出になったわ」
シェリフはニヤリと笑い、鍋を持ったまま歩き出しました。
「それじゃな。メリークリスマス」
「メリー…、ちょ、ちょっと待って」
 少女は鞄に残っていた石を取り出しサインペンで何か書き、それをシェリフに渡し、
「メリークリスマス」
そう言って、走り去っていきました。
 シェリフが手にした石には、(^v^)←こんな顔が描かれていました。

 後に、スープを温める焼き石がこの街の名物になりました。

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