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2001/09/22 (Sat) 夢遊病の果て

 朝、目が覚めると、背中に羽が生えていた。Tシャツにも全然隠れるくらいの、ちょうど手の平みたいな大きさの羽が。寝返りをうちながら感じていた妙な違和感は、このせいだったのだ。起き上がって鏡を見て最初に僕が言ったのは、
「やっべー。俺、イカロス?」
だった。

 小さい羽では飛ぶことなんてできなくて、それでも神経は通ってるみたいで、手や足を動かすように羽を動かすことは出来た。服を着るときは背中にぴたりとくっつけて、背中が盛り上がらないようにしておく。リュックでも背負えば全然わからない。
 いつものように学校へ向かう途中のバスに、車椅子のお婆さんが乗ろうとしていた。あいにく、この辺を走るバスはバリアフリーどころではなく、昇降時の段差は激しい。しかたなく車椅子を持ち上げてバスに乗せてあげて、何を思ったか、自分が降りるはずのバス停が過ぎてもお婆さんが降りるところまで付き合って、降りるのを手伝う。完璧に遅刻だ。まあいいや。なぜか気持ちが晴れ晴れしてたから。なんだか背中が疼いた。
 僕もそこで降りて、学校までバス停3つ分、歩くことにした。今度は、書類を地面に散らかしたサラリーマンを見つけた。やれやれと思いながらも手伝ってあげる。いや、僕は本当はこんなことしたくないんだ。僕は自分がいい人だなんて思わない。いい人じゃなくて構わない。偽善的行為だってことは分かってる。でも、なぜか放っておけないんだ。そう思っていても、また背中が疼く。

 その後も、迷子を交番に届けたり、街角でライターを売っている女の子から“大人買い”で買ってあげたり、ダンボールの子犬に餌をあげたりした。そのたびに背中が疼く。学校に着いたのは、11時だった。
 なぜか校門に竹刀を持った先生がいたが、叱られるなら仕方ないと思い堂々と入っていく。先生は「来るな!」とか言う始末。なんで?と思っていると、コンタクトを落としたらしい。僕はこれも手伝ってあげた。教室に着いたのは昼休みだった。

 リュックを机に置くと、隣の席の友達が「何仕込んでんだよ!」と言って背中を叩いた。自分のことだから気付かなかったが、羽が、異常に、大きくなっていた。
 大急ぎで保健室へかけこみ、服を脱ぐ。羽は最早、翼といってもいいくらいの大きさで、両腕を広げたくらいのサイズになっていた。肩を包めるくらいの大きさだ。
 でも、僕は、普通の、高校生なんだ。こんな派手なモノ持ってたら、何て言われるかわからないよ。羽なんていらないよ。特別なんていらない。普通でいいんだ。助けて。助けてよ!

 思いきり羽ばたいてみる。………、体が浮きそうだ。窓から空を眺めた。
 『 飛 び た い 』
 ふと、そう思ってしまった。そう思ってしまった瞬間、僕は2階の窓から飛び立っていた。よくよく見ると、純白の美しい翼だ。羽ばたくたびに一つ二つ、羽根が取れる。ああ、気持ちいい。僕はもう普通じゃない。天使だ。仕方ない。これが運命なら。天使でいいや。これが僕なら。

 後に、僕の羽根に触れた人の背中に、手の平サイズの羽が生えたという話を聞いた。僕たちの羽は、蝋で固めた鳥の羽根じゃない。太陽へ向かって、飛んでいける。

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