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2001/10/05 (Fri) 記憶商人(1)

 電車の中、いきなり女に声を掛けられた。痴漢と間違ったのかと一瞬ヒヤッとしたが、違うようだ。女は俺に「ひさしぶりね」と、少し悲しそうな顔で言うのだが…、はっきり言って、俺はこの女を知らない。
「人違いじゃないですか?」
爽やかにそう言い放つ。厄介ごとは御免だ。営業スマイルで軽くかわす。それともこれはナンパの手段だろうか?いや、セールスや何かのキャッチとも考えられる。いきなり話しかけてくる見ず知らずの女には気をつけろ。

 俺が電車を降りても、女は後をつけてきた。
「どうしたの!?怒ってるの?そりゃ確かに私も悪かった…、でもケンタも今はパパに会いたいって言ってるわ。もう私はいいから、大丈夫だから、会ってあげて」
驚いた。子供がいるというのか?俺とこの女の間に。ケンタ?知らないな。しかし女は執拗にたわ言を言い続けた。
 仕方なく喫茶店に入る。
「あの、失礼ですが…、人違いだと思いますよ。僕はあなたを知りませんし」
女は驚きと悲しみの入り混じった瞳で俺を見る。数秒見つめた後、手で口を隠して下を向く。コーヒーをかき回すスプーンを皿に乗せ、溜息をつく。俺はいい加減あきれてしまった。仕方ない。聞いてやるか。セールスには乗らないがな。
「あの、よかったら…、最初からお話願えませんか…?」

 女の話は、こうだった。俺はかつてこの女と離婚した。4歳になる息子がいるらしい。俺から慰謝料として数ヶ月前に莫大な金を振り込まれたおかげで生活できているらしい。そして、俺は大学時代からこの女と付き合っていたらしい。
 全て、記憶にない。この女の顔を見るのも初めてだ。俺は俺の心の中に、目の前で涙をこらえるこの女に対して、少しも情を見出すことができなかった。

「やっぱり人違いです。すみません、お時間遣わせてしまって」
 喫茶店の払いを済ませ、俺は店を出る。

 とんだ人違いもあったものだ…

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