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2001/10/07 (Sun) 記憶商人(3)

 私は液体を一口で飲み干した。と同時に、まるで目の前のことのように、ある記憶が展開されていく。胸が締め付けられるような悲しみと、深い愛と、諦めが入り混じった感情に支配されていく…


 (手紙を書こうか、ワープロで書いてフロッピーにでも保存しておこうか、それともビデオで残そうか)
 (俺は記憶屋の奥の部屋にある記憶吸引装置を着け、深呼吸を繰り返す。ヘッドホンみたいなものにアイマスク。それだけ。右手に持った小さなスイッチを押せば、この記憶はなくなるのか)
 (一体、どういう具合でなくなるんだろう。もしかしたら、心の片隅には残るかもしれない。それに…、俺の、家族への想いだけを切り取ることなんて出来るのだろうか。謎だ。しかし…まあいい。意を決した俺は、あとは、ここに最後のメッセージを残すだけだ。いつか、いつの日か、君に届くように。或いは、ケンタに届くように。たとえ俺が街角で君とすれ違っても、きっと俺はもう、君の顔すら分からなくなっているんだろう。冷たく突き放すかもしれない。でも、俺はいつまでも、君と、息子を、想って、家族の幸せのために生きることを誓う。そのことだけは間違いない。育児ノイローゼと仕事と色んな人間関係に疲れた君には、俺の愛は届かないね。最近は掃除も洗濯も俺がやるようになった…フフ。笑えるな。人のために生きることをようやく知ったのに、それが遅すぎたなんて、な)
 (涙がこぼれる。恋人の別れよりむしろ。愛がなくなったわけでもない。それでも離婚しなきゃいけないなんて。全ては互いの幸せのため…、それはただの奇麗事か?)
 (思えば、君と出逢ったのは…大学の頃だっけ?たしか…)

 彼の赤裸々すぎる心が、私と息子への思いが、今では自分の記憶なのに、思い出しては涙がこぼれる。彼は、こんな苦しみを…。
 苦しみを捨てるため、記憶を売ったの?それとも…
 いえ、違う。この心には曇りは何一つなかった。記憶を売ったお金を、もう知らない人間であるところの私達に振り込んでくれるように店主さんに頼んだことも…

 (もう俺は覚えてないだろうけど、もし、この記憶を辿る人がいたら、俺が君と出逢ったあの場所へ行ってくれないか)
 (俺の頭はこの約束を忘れても、心に刻んでおくから。あの場所で、毎年あの日に、待ってるから。たとえ俺や君が他の誰かと家庭を持っても、俺が君を想うこと、想っていたことに変わりは無いから)

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