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2001/11/07 (Wed) タワーオブバベル

 マンション「バベル」。そこは各階に部屋がひとつしかない、やたら高いマンションだ。部屋は各階とも同じ構造。2DKでトイレ風呂は別れている。防音は完璧。駅からも道路からも、あらゆる幹線から遠いものの、駐車場完備で45階建てという、なかば無理矢理な造りが受け、入居者が殺到、部屋は最低3ヶ月以上のキャンセル待ちという具合だ。ちなみに賃貸マンションだが、希望により分譲することも可能だという。1階は駐車場、2階は管理員の住み込み部屋、マンションは3階からとなっている。3階の家賃が4万で、あとは1階上がるごとに3000円ずつ高くなっていく。
 通称「タワー」。確かにひょろりと高いそのマンションは、一見、塔のようにも見える。
 そのタワーの32、33階は、宗教法人「救世主創出委員会」が借りている。他の部屋の入居者たちも、どうしてあんな変な集団に部屋を貸しているのか、不動産屋の気が知れない。しかもその2部屋はやたらに人の出入りが多い。

 元教団幹部の証言ビデオが出てきた。流出元は知らない。暗い部屋で、スーツを着た男の首から下だけが映っている。音声は変えてあるのだろう、妙に甲高い声になっている。男は淡々と教団の事実を喋り始めた。
「いやね、宗教法人は金になるじゃないですか(親指と人差し指で円を作る)。それで最初は山梨で始めたんだけどね、これがイヤに受けちゃって。いえね、もちろん我々が宗教団体だなんて言いませんよ。適当に名乗った医学研究組織だっていうことにして、優秀な人物の遺伝子を後世に残す研究をしてるんだって言ってお客に近づくんですよ。いえね、もちろん“表”は使いません。我々、出会い系サイトもいくつか運営してるんですけどね、そこでサクラの女の子を使って男を集めて、逆にサクラの男を使って女の子を集めたりしてね、それでパーティーを開くんですよ。深夜のパーティーです。飲み物には教団独自のルートで仕込んだ“薬”を入れて前後不覚にしてね、いえ、そんな売春行為とかはしてませんよ(人差し指を立てて左右に振る)。頭をちょっとボヤけさせて、教団のそのポリシーを仕込むんですよ。遺伝子治療の最先端だ、ってね。それで後日、数人を呼び出して……これもサクラを使ってですけど、それであのマンションに連れて行くんです。最初は32階。そこでテストをするんですよ。知能テストです(両手を閉じたり開いたり意味不明な動作)。もちろん、最初に出会い系サイトの登録情報から職業とか年齢を知るわけですが、まぁ、ほとんどが嘘ですね。男の方は嘘ですよ。女はけっこう本当の職業を書くんですけど、男は受けを狙ってるのか、社会的地位の高い職を書くわけです。そこで本当かどうかテストをするんです。簡単なテストですが、すぐにIQは出ますね。それで優秀な人だけをまた後日集めて33階へ行かせるんです。そこは教団の巣になってまして……いえ、本山といいますか。そこで救世主を作るという真実を叩き込むわけです。まぁ、彼らには寄付をしてもらうだけなんですけどね、いえ、ちょっとまぁ(照れ笑い)、彼らに稼いでもらって……ね(手をパッと広げる意味不明な動作)。で、教団がやってることと言えば、あれはもう、トチ狂ってますね。ほら、マンションは2部屋あるじゃないですか。その1室では、日夜、それはもう朝も夜もなく“聖交”が行われてるんです。ベッドが2つありましてね、優秀な遺伝子を持った人間同士が……まぁ、やりまくってるわけです。しかしそれは不貞ではない。いえ、野菜や動物の品種改良と同じですよ。優秀な人材同士の交配で、より優秀な素材を作る。そうして日々、より優秀な人間を……“新人類”を作ろうと、躍起になってるわけです。
 (コップの水を一気飲みして)で、そうやって優秀な人材を作り上げたあとは、タワーとは他の場所で教育します。それで救世主を作ろうってんだからね、アンタ、こりゃもう狂ってるとしか思えない。しかも救世主になれなかった、選ばれなかった子達はもう用なしだってんで野に放すわけですよ。まぁ、誰かが見つけて施設とかに入れてくれるんでしょうけど、あんなことやって何の意味があるのか……そう思ってたんです。しかし、私が教団を抜けたのは、教祖が私に話したことのせいなんです。教祖はね、そうやって優秀な肉体と頭脳を持った人間……救世主ができたら、今度は自分の脳を移植しようってハラなんですよ。ありゃあ許せなかった。倫理的にね。だから私は彼を殺してこうしてビデオに真実を残し逃亡する決意を固めたんですけどね、聞いた話によると、教祖が自身のコピーを試した結果が、まだまだいるらしいんです。脳や遺伝子を、細胞をね、教祖のそれと置き換えるように遺伝子操作された人たちですよ。何十人っていったかな。もう世の中、教祖だらけですよ。私はこうしてひとりでその教祖コピーたちを暗殺してるんですけどね、教団の勢いは止まらない。いまや私の存在もバレて、命を狙われてる始末です。でね、最近、気付いたんですよ。そんな悪の教団を倒すために日々闘っている私こそが、もしかしたら人類にとっての救世主じゃないかってね。だから私はあの教団を今度は買収することに決めたんです。なぜって? ハハハ、決まってるじゃないですか。救世主である私の優秀な遺伝子と細胞を後世に伝え遺すためですよ。優秀な私をコピーして、人類を新たな舞台に立たせてあげようってわけです。新たな舞台に立つのは私の部隊、なんてね。ハハハハハハハ……」

 ビデオはそこで終わっていた。巻き戻してみてみると、なぜか古い火サスのラストシーンが映っていた。崖で犯人が捕まって全てを告白、そしてスタッフロールとともにエンディングテーマ「マドンナたちのララバイ」が流れる。
 遣る瀬無い気持ちで一杯になった。

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