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2001/11/10 (Sat) 欲望の神龍

 その日、雨宿りのために一人の若者が洞穴に入りました。外は土砂降りの大雨です。若者は背に担いだ薪や草やキノコを下ろし、大きくため息をつきます。ふと奥を見ると、遠くに光が見えたような気がしました。洞穴かと思ったら出口があるのでしょうか。
 とりあえず奥へ進むことにします。小さな光は確かに見えますが、そこまでどれくらい離れているのかもわかりません。ずっとずっと歩き、ひたすらまっすぐに歩き、疲れさえ忘れるほどの距離を歩いた頃、ようやく光が大きくなってきました。振り返ると、入り口はどこにも見えませんでした。
「だ、誰かおるんかいっ!」
 若者は光の方へ向かって叫びました。その声は自分でもわかるほど震えていました。
「…よくここまで来たな」
老人の声です。若者はゆっくりと近づきました。光に見えたのは、大きな蛇…もとい、龍でした。龍の体が、うろこが、光を放っていたのでした。
「ああっ!バケモンじゃ!食わんとってくれ!勘弁してけろ!」
若者は恐ろしくなり、土下座しました。足が動かないことを既に知っていたのです。龍はにゅっと首を伸ばし、若者の周囲を取り囲んでから、顔を近づけました。
「怖がらなくてもよい。ここまで来た勇気ある者よ」
「ほえ?殺さんのけ?すまんのう。ありがたやありがたや」
「今から言う七つの心のうち、一つだけを満たしてやろう。さあ、選ぶがいい」
 龍はゆっくりと七つの言葉を言いました。どれも若者には難しい言葉でした。
「…それってつまり。願いをかなえてくれるっちゅうことかいのう」
「お前の望みはどれだ?」

 気が付くと若者は洞穴の前にいました。雨は上がっています。振り向いても洞穴はすぐ行き止まりになっています。先ほどのことは夢だったのでしょうか。
 しかし若者が村へ帰ると、若者を取り巻く環境が変わっていることに気付きました。望みがかなっていたのです。若者はそれから、幸せな日々を暮らしました。しかし…

「七つの心のうち、一つだけを満たしてやろう。しかし、他の六つは一生満たされることはない。それでもいいのなら、選ぶがいい」
 使い切れないほどの金か、最高の食事か、永遠の快楽か、果てしない権力か、あるいは眠らずに済む体か、人に愛されたいと願う心か、一生を穏やかに生きられる未来か。

 …しかし若者は、満たされることを知ってしまったことで、満たされない悲しさを痛感しました。同時に他の欲求が肥大していくのを感じます。そこに残るのは全てを手に入れたいと思う欲望と、いっそ全てを捨ててしまおうという欲望だけで、そこそこの幸福を願うことなど最早出来なくなっていたのです。

「たとえ六つを…いや、全てを満たしたとしても、俺は、いや、人は!幸せになることはできんのじゃ!あの龍は悪鬼そのものじゃ!俺に光を与える振りをして全てを奪ったんじゃ!キー!」
 若者は自らその命を断ちました。

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